世界はここにある。 オレは、この世界に居る。 藤代も、この世界のどこかに存在する。 だから、いつか会うこともあるだろう。 いや、一生会わないのかもしれない。 だが、藤代と同じ世界に生まれてきただけでも、3年間だけのほんのすれ違うような出会いであったとしても、オレには幸運であったのかもしれない。 あんな男に出逢うことは、もうないだろう。 いや、もしかしたら、もっと特別な人間にこれから出会うのかもしれない。 運命の女とか、そんなものがいると思うのは、男のロマンというものだ。
『この世界に、そんな女いるかね』 『いるだろ』 聞こえてくるのは、藤代の素っ気無い声だ。
あいつも特別な誰かに、出会うのだろうか。
あいつは、自分を冷たい人間だと思っていた。 他人に興味がないんだと、自嘲っていた。 だが、藤代は平等な男だ。 藤代は他人に対しても、自分自身に対しても執着が希薄だった。
あいつも誰かに、出会えればいいと思った。 自分自身が大切に思えるような、誰かに。
「優しいな。オレって」
世界が、オレのように藤代に優しければ、いいと思った。
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