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ミヤギ 作者:清夏

最終回   心と体
 宮城とは、『また、飯でも食おう』と言って卒業式で別れてから、もう4年会っていない。
 別に喧嘩したとか、そういうことではなく、住むところが別々になっただけだ。俺は進学の為に上京し、宮城は九州の方の大学に行くと言い出した。
 それだけのことだ。



 今度生まれ変わったら、女に生まれたい?男に生まれたい?
なんて話になることがある。
 女が良いとか、男が良いとか、みんな楽しそうに言い合ったりする。
「藤代君は、どっちがいい?」
 問いの矛先が、こっちに廻ってくる。
 俺は、何となく宮城のことを考えた。宮城は、なんと答えるだろうか。
「心と体の両方が一緒なら、どっちでもいいな」
 周囲の奴らは、何のことだと、ぽかんとした顔になる。



 宮城は、もう男の体になったのだろうか。
 俺は、ふと思う。
 もし、あいつが身も心も男になっていたとしたら、俺はどうすればいいのだろう。
 俺は、相変わらず人に対して、あまり興味がない。自分についても同じことだ。誰も好きにはならないし、誰とも深くは付き合わない。
 まあ、いいか。と、思う。
 死ぬまでに、どうするか決められたら、それでいいかもしれない。
 意外に、もう結論は出ているのかもしれない。



 今度、宮城に電話でもかけてみようか。
 別に何の用事もないけど、まあ、あいつならいいだろう。
 長い間、連絡をとろうとしなかったことに、恨み言のひとつも言うだろう。
 笑いながら、言うだろう。
「冷たいな。フジシロは」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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