「いや、なんだか確かめたくなって」 さすがにきまりが悪くなったのか、宮城は背を向けた。 「何をだよ」 「お前の体とオレの体の違いを」 「バカだな、お前。もしかしなくても」 「ホントにバカだわ。見比べてたら、なんだか泣けてきた」 宮城は、自分のシャツのボタンをかけながら、弱々しく笑った。 俺も、必死でボタンを止めて、ファスナーを上げて、ベルトを締めた。 一体どこまで見比べたのか知らんが、ムカつく。 「なあ、フジシロって、やっぱり」 「なんだよ」 「色素薄いんだな」 「死ね」
「なあ、フジシロ」 「うるさい」 まだ俺の体について何か言いたいことがあるのか。俺は拒絶した。 「あの、お前のカノジョのことだけど」 宮城は口に上らせたのは、俺がとうに忘れかけていたことだった。 俺ってホントに、冷たい。 「あいつ『プラトニックでいいわ』なんて言ったか?」 俺はわざと嫌なヤツになった。 「それは言わなかった」 宮城は、ほっとしたような顔で薄く笑った。 こんな表情もするのだと、俺はなぜだか感心した。
「宮城」 「なんだ?」 「お前、なんで女と付き合うんだ?」 俺は、ずっと疑問に感じていたことを口にした。 「女なのに、って言いたいのか?」 あ、怒った。 「いや、好きでもない女とどうして付き合うんだ?」 俺には、つきあった女の誰かを、宮城が好きだったことがあるとは思えなかった。ただ、女でさえあればいいような付き合い方だった。 宮城が俺の顔をじっと見る。 「じゃあ、フジシロ。お前は好きな女と付き合ってるのか?」 「いや」 墓穴だ。だが、俺のことは、とりあえずどうでもいい。 「それは置いとけ」 「仕方ねえな」 宮城は、ニヤリとしやがった。 俺は、溜息をひとつおとして、あらためて話を元に戻した。 「お前、女と付き合わなきゃならねえって、無理してる感じがするんだけどな」 だからと言って、男と付き合えと言うつもりはないぞ。と、付け加えておく。 「男にもいろいろある。俺みたいに、好きでもない女と付き合う男もいるし、好きな女としか付き合わない男もいる。お前は、人から男だと思われたくて、女と付き合おうとしているだけにしか見えない」 俺が長々そんな勝手なことを言っている間、宮城はずっと黙ってそれを聞いていた。気味が悪い。 宮城は、何か考えていた。考え、考えて、ようやく顔を上げた。 「俺は確かに男なのに、何が男なのか、自信がなくなるときがある。そういう時に、女と付き合いたくなる」
最低だな。お前も俺も。 俺がそう言ったのか、宮城がそう行ったのか。そういう結論になった。
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