宮城とは、それから一月、口をきいていない。 俺は、別の奴らとあいかわらず親友だとか言い合って暮している。俺は、優しいのだ。そう、言い聞かせながら。 宮城は、相変わらず女に囲まれ、楽しそうだ。美貴とは、別れたみたいだが、楽しそうだった。 どうでもいいことだ。 美貴も、宮城も、どうだってかまわなかった。 それに気付いたから、宮城という男とはいられないと思った。
屋上というのは、昼寝には向かない。なにしろ屋外だ。夏は暑く、冬寒い。ここの良いところは、人が来ないところだ。 屋上への扉は、鍵がかかっていて、生徒はこれを持っていない。はずだが、どういう訳か宮城は持っていた。 宮城は、その鍵を俺に呉れた。これもどういう訳か不明だ。俺に秘密を打ち明けたせいだろうか。だいたい、どうして俺に病気のことを言ったのかも疑問だが。 あれ以来、俺は屋上を避けていた。 その日は、魔が差したとしか言い様がない。そろそろ、宮城との仲違いに疲れていたのかもしれない。
俺の表向きの優しい生活は、ここにきて少し変化が出てきた。と、言うか破綻しかけていた。俺は、あまり人の話を聞いていなくて、怒りを買ったりしていた。 みな、どうでもいいことを人に話したがる。 どうせ、人の意見など聞きたい訳でもないのに、もう答えは自分で出しているくせに、相談など持ちかけてくる。所詮、俺は悩んでいることを言って満足するためだけの相手なのだ。 だったら人を巻き込むな。そんな気分になってくる。
俺は、屋上に誰もいないことに、がっかりし、またホッともしていた。 『冷たいな。フジシロは』 そんな言葉が降ってくる。もう、そんな日はない。
仰向けに寝転ぶと、空が眩しいくらいに青い。 秋だから、天は高くなっているのだろうか。酷く、遠いものに見えた。
やがて、睡魔が襲ってきた。寒くなく、暑くない。実に危険な季節だ。
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