■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

ミヤギ 作者:清夏

第5回  
 宮城とは、それから一月、口をきいていない。
 俺は、別の奴らとあいかわらず親友だとか言い合って暮している。俺は、優しいのだ。そう、言い聞かせながら。
 宮城は、相変わらず女に囲まれ、楽しそうだ。美貴とは、別れたみたいだが、楽しそうだった。
 どうでもいいことだ。
 美貴も、宮城も、どうだってかまわなかった。
 それに気付いたから、宮城という男とはいられないと思った。



 屋上というのは、昼寝には向かない。なにしろ屋外だ。夏は暑く、冬寒い。ここの良いところは、人が来ないところだ。
 屋上への扉は、鍵がかかっていて、生徒はこれを持っていない。はずだが、どういう訳か宮城は持っていた。
 宮城は、その鍵を俺に呉れた。これもどういう訳か不明だ。俺に秘密を打ち明けたせいだろうか。だいたい、どうして俺に病気のことを言ったのかも疑問だが。
 あれ以来、俺は屋上を避けていた。
 その日は、魔が差したとしか言い様がない。そろそろ、宮城との仲違いに疲れていたのかもしれない。



 俺の表向きの優しい生活は、ここにきて少し変化が出てきた。と、言うか破綻しかけていた。俺は、あまり人の話を聞いていなくて、怒りを買ったりしていた。
 みな、どうでもいいことを人に話したがる。
 どうせ、人の意見など聞きたい訳でもないのに、もう答えは自分で出しているくせに、相談など持ちかけてくる。所詮、俺は悩んでいることを言って満足するためだけの相手なのだ。
 だったら人を巻き込むな。そんな気分になってくる。



 俺は、屋上に誰もいないことに、がっかりし、またホッともしていた。
『冷たいな。フジシロは』
 そんな言葉が降ってくる。もう、そんな日はない。

 仰向けに寝転ぶと、空が眩しいくらいに青い。
 秋だから、天は高くなっているのだろうか。酷く、遠いものに見えた。

 やがて、睡魔が襲ってきた。寒くなく、暑くない。実に危険な季節だ。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections