宮城は、黙った。 そうして、俺の顔をじっと見た。 しまった。と、思った。しかし、それは冗談だと、お前は親友だと、直ぐに言ってやることが、出来なかった。 それが、いけなかった。 「お前……」 宮城が傷ついたという顔をする。これは、本当だ。焦った。 「みや……」 取り繕うとした俺の肩をがっしり掴み、宮城は信じられないことを真っ直ぐに放った。 「お前、俺に惚れたか」 「はあ?」 予想不能な宮城の言葉に、俺の心は一気にブリザードだ。 「俺は体は確かに女かもしれないが、心は男だ。残念ながら、お前の気持ちには応えられない」 宮城は、目を伏せる。その下で、口元が笑っているのが見える。 「いっぺん死ね。そしたら、今度は男の体に生まれてくるかもしれん」 よっぽど、酷い言葉だが、宮城はカラカラと笑った。 「いいなあ、それ。死んで男の体が手に入るんだったら、何べん死んでもいいな」 それは宮城の本音だったかもしれない。少し、切ないかもしれんと思った。
宮城はもてる。冗談みたいに、女が次から次へと宮城に吸い寄せられる。だが、別れるのも速い。 それは女たちが、宮城に求めることを宮城が与えられないからだ。 「高校生で、男と女が付き合って、『プラトニックです』なんて微笑ましいことはあり得ないんだとさ」 そう宮城に言われて、俺は初めてそれに気付いた。 知っているはずなのに、俺は時々、宮城の体が女なのだとうことを忘れてしまう。 どんな治療か知らないが、宮城は病院に行っている。親も学校も、宮城の病気を理解している。しかし、年齢的に体を手術で変えることは出来ないのだそうだ。ちなみに戸籍も、女のままらしい。 「そういう女と付き合えばいいんじゃねえの」 俺は、ちょっと気の毒だと思った。 「この世界に、そんな女いるかね」 「いるだろ」 素っ気無く答えるのは、同情しているのが分からないようにする為だ。 「優しいなあ。フジシロは」 そうきたか。
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