見かけで言えば、宮城の方が俺よりも男らしい。かもしれない。 俺の見かけは、ごく普通の高校生男子だと思う。確かに、目や肌や、髪の色素は薄いし、痩せている方だが、それが男であることを否定するものではない。体は、確実に男であるし、自分は男だという確信はある。だが、もし体が女だとしたら、そんな確信は持てただろうか。疑問だ。 とかなんとか、少々気持ちの悪いことを考えてしまった後。宮城とは何となくどう接したものかと悩んでみた。 女として見るべきか、男として見るべきか。 考えたが、結論は出なかった。 けれど、宮城を見れば、自然と答えは出た。 こいつは男だ。男以外の何者でもない。
「なあ、フジシロ」 「あ?」 「お前って、カノジョとかいる?」 居る。が、答える義理があるのだろうか。俺は、少し間をおいてしまった。 「なんだ。いないのか」 そう勝手に決めつけられると、腹がたつ。 「いる」 「へえ、どんな女?」 「お前に言う義理はない」 あからさまに興味アリという宮城の顔から、俺は目をそらした。 こいつにカノジョを盗られたというヤツの話は、数限りなく聞く。ここは牽制しておかねば。 「冷たいな。フジシロは」 まただ。 「じゃあお前の女、俺に教えてくれるのか?」 言えるはずがない。いないからではない。居過ぎるのだ。 宮城は、ゲラゲラ笑い出して、そりゃ無理だと言った。 そうだろう。俺は、これでこの会話は終わりだと思った。 「今、女いないからさ」 しゃあしゃあと、その口が言う。 「そうか」 「ホント、冷たいな。お前。何でいないんだとか、別れたのかとか聞いてくれ」 怒ったような顔をして見せても無駄だ。全然かわいくない。 「別れたのか?」 「ああ」 「全員とか?」 「そう、全員に振られた」 「そりゃ、ご愁傷様」 俺の心の込もらない言葉に、また、宮城は言う。 「冷たいな。フジシロは」 俺は、そんなに冷たい男では、断じてない。友人の相談によくのる方だし、付き合う女には優しいと評判だ。もっとも、『藤代くんて、誰にでも優しいんだ』と女に振られることも多い。それは、まあ、この際どうでもいい。 問題は、宮城に対して俺が冷淡だということだ。 なんだかこいつには、俺を入り込ませない何かを持っている。つきまとって、秘密まで打ち明けているが、決して心を許していないのだ。俺は、それが気に食わないのかもしれない。 「親友なんだから、も少し慰めてくれてもいいんじゃねえの。」 「親友ならな」 不服そうな宮城の声に、俺は思わず言ってしまった。軽い冗談に過ぎなかった。
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