深夜。ある企業の建物から流れるように、二人の男が姿をあらわにした。
「なあ、いいじゃないか少しぐらい」 「またバーですか?もうお金ないんですよ私」 「構わん。おごってやるから」
どうやら職場での上司とその部下らしい。ここ最近、勤務を終えてから毎日のようにバーに通いつめているようだ。部下の方の男はいささか気が進まない。
「うーん、おごって頂けるなら甘えさせて頂いて・・・」 「そうこなくてはいかん」
その上司と思われる男は部下の手を強くひいて都会の夜道へと消えていく。数分歩いた先、行きつけのバーが見えた。
「ほれ、景気付けに飲め飲め」 「そんなに無理ですよ」
もう上司はすっかり酔ってしまっている。舌のろれつも支離滅裂だ。
「おぉれはぁ、ふぅぞくのけぇしんだぁぁあ!」
わけの分からない事を喚く上司を部下は一生懸命になだめる。上司はマスターから透けたコップ一杯の水を受け取ると、それを一気にぐいぐいと飲み干した。結果的に効いたのかなんなのか酔いが覚めたようで、いきなり毅然とした表情で部下を据え、低く強い声で語りかけた。
「お前は俺が信用する数少ない付き人だ。そうだ、俺の秘密を教えてやろう」 「は、はあ・・・」
上司が本気の形相なのを悟り、部下はつい緊張して顔をこわばらせた。上司が続けて言った。
「俺、実はリザーボンドのメンバーなんだ」 「それはホラーですね」
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