今朝、大切に飼っていたパーニャが死んだ。セミのパーニャが死んだ。 「パーニャ、どうして・・・。ちょっと冷蔵庫で保管しただけなのに・・・・」 幼虫から七年も育てたのだ。悲しくないはずがない。 「パーニャ、パーニャアアアアアアアアアアアアア!」 冷たくなってしまったパーニャを抱きかかえながらバーニャはおいおい泣いた。確かに泣いていた。ただ口は笑っていた。 「ふふふ、僕はパーニャじゃない!バーニャなのさあああああああああああ!そして僕は15歳だ!イエアアアアアアアアアア!」
バーニャは狂気に満ちた形相で公園「リザーボンド」へ足を運んだ。公園にはすでに先客が訪れている。いずれもイカツイ面をした中年男性達で、皆その筋の御方々(ヤクザ)だった。バーニャは己のテリトリーを荒らせている事にひどくうろたえたが、やがて懐を手をいれ、護身用のカッターナイフを片手にリザーボンドへと足を踏み込んだ。 ヤクザ達は一斉にバーニャの方へ振り返る。 「おいおい坊主、ここは俺達のテリトリーだぜ」 得意気に言い放った。バーニャは負けじと言い返した。 「うるせえ、こっちにはカッターナイフがあるんだ」 ヤクザは応答した。 「仕方ねえ、今回だけは言う通りにしてやらあ」 バーニャはいきった。そして不敵な笑みを口元に浮かべ、低いがドスの利いた声で牽制するように呟いた。 「よしババ抜きをしよう」 ヤクザは相変わらずサングラスをギラギラさせてはいるが、 「ババ抜きか、面白そうじゃねえか」 どうやら即決のようだ。
「やったー上がりだ」 「イカサマはいけえねえぜ、坊主」 「おいおいよしてくれよ、俺はカッターナイフを持っているんだぜ」 「ごめん」 彼らがUFOを見たのは、それからおよそ数日後の事だった(数日間ずっとババ抜きやってました)。
|
|