―――――― 表‐参
「っと、あと2日か」 東京郊外の地図を見て呟く。 「あと2日って、まだ着かないの?」 「そんなこと言ったって、桜井さんが毎回きっちりと1時間おきに休憩をとっているからでしょ?」 「うぐ・・・それは・・・」 返答に詰まっている。 「とにかく、このままじゃぁ百年たっても着かないのでペースアップしますよ」 「百年もあったら着くもん」 「ハイハイ、例えですよ。た・と・え」 俺と桜井さんはあの時空断層を見たあと、その時空断層のある場所まで向かうことにしたのだが、 まだ着かない。というか、巨大すぎて距離感がつかめない。 人間は簡単におかしくなる。俺は桜井さんには黙っているが、行く道の先々で男が女を襲ったり、 喧嘩をおっぱじめている奴らもいる。 休憩をとっているときにも、変な声が聞えたりと人間の変化っぷりを証明している。 「はぁぁ」 思わず溜息が出る。 「どしたの?」 ひょい、と桜井さんが顔を出している。その顔の近さに思わず、 「うわっ!!」 と体をのけぞってしまった。 「ひどいなー、そんなに驚くことないじゃん」 モプーと頬を膨らます。 顔が熱い。 「あれっ、どうしたの顔赤いよ?」 「い、いや、なんでも。さあ休憩終わり、いきますぜ」 「はーい」 まだ顔が熱い。今まで女には本当に縁が無かったわけではない。あったけど全部俺が興味を持つような人たちではなかった。 でも桜井さんは違った。何か、今まで付き合った女とは違う人間を引き付けるような、何か≠ェあった。でもいつもクラスではムッツリして窓の外を見ているが、俺と話すときは、笑ったり、怒ったり、と喜怒哀楽がでている。そこを指摘したら、「ば・・・ばかぁ」と言われてしまった。どうよ、この彼女の理不尽さは。 その時だった。俺たちが行こうとしている方向から人が2、3人走ってくるのが見えた。 「はやくっ、逃げろ!」 と叫んでいるように見えた。その瞬間だった。叫んでいた男の人の後ろに異形な形をした化け物が飛びかかろうとしていた。そして、ボヒュッ、と言う音とともに首から上が吹き飛んでいた。 「おい・・・なんだよ、あれ」 「えっ・・・なに?」 桜井さんには見えていないようだ。 「え、桜井さん視力は?」 「1,5」 普通の人より少しある。それでも見えないものを見た。おかしい。そして桜井さんは、叫び声はおろか、男の人なんて見てないと言う。 「何なんだよ。ったく」 歩き始めたとき、それは突如起こった。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。 激しい地鳴りが聞えてくる。そして俺は次に何が起こるかを、知っていた。 「くるっ」 そう叫んだとき時空断裂が元の景色に戻った。そう思った瞬間、グニャリ。その音を俺は確かに聞いた。そしてまた時空断裂が双曲線のようにグニャリと歪曲して・・・しーん。とした時、俺には1秒が10分に感じられた。走馬灯。話には聞いたことがあったが、実際に自分が体験するのは初めてだ。 その瞬間、世界は、いや、地球という惑星は、銀河から、宇宙から一度消滅して―――。
俺の、いや全てが、
崩壊した。
EXERUTZ・LEVEL・ZERO
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