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もし、素直に泣く事ができたなら… 作者:快新平

最終回   嬉しくて…
声を張り上げて叫びたいくらい、

言葉では表現できないくらい嬉しくて、

涙が出そうになった。




私が書いた文章が、

誰かに何かを残せている事を知って。

私の思いが、

僅かでも伝わっている事を知って。



ありがとうでは足りなくて、

伝わらないもどかしさに、

涙が出そうになった。



演奏を終えたら、

大きな拍手が起こって。

演じきった瞬間に、

歓声をもらって。



これ以上下げられないくらいに、

頭を下げて、

礼をした。



懐かしい先生が、

おめでとうと言ってくれた。

がんばれと言ってくれた。

声を張り上げて泣けたら、

楽になれそうな気がした。



伝わった喜びと、

伝えきれないもどかしさと、

両方を抱えて、

こぼれない涙に手をやりながら、




もし、今、素直に泣く事ができたなら、

あなたに何か伝わるだろうか。

涙は言葉以上に、

あなたに何かを語ってくれるだろうか。

でも、素直に涙はこぼれてはくれない。

私が思う世界で一番の不思議。

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