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卒業の日に思うこと 作者:快新平

第3回   砂山亜香梨の場合
 皆と一緒に卒業できてよかった。


 私は、1年前まで全日制高校の生徒でした。


 進学校でしたし、勉強も大変で、何より遠距離を通学しなければならなくて、その上、部活で休みなしの生活を送ってて、でも部活は楽しくて。真面目な私は、手を抜くってことができなくて。


 結局、無理がたたったんでしょうね。精神的に病んでしまって。学校行けなくなって。結局、2年生の半ばで休学しました。


 カウンセリングを受け始めた頃、カウンセリングの先生が教えてくれたのが、通信制のこの高校の存在。もし、全日制の高校が辛ければ、こういう手もあるよと、教えてくれました。


 本来なら、2年生をもう1回やらなきゃいけないところを、全日制の先生が、何とか2年生分の単位をいくつか取らせてくれて。おかげで、1年間で何とか卒業できる事になりました。


 なにより、私を心配してくれたのは母親でした。


 でも、通信制の高校に行くことに、最後まで反対したのも、母親でした。


 でも、今日、卒業の日を迎えて、母も、無事に卒業で来て良かったね、おめでとう、と言ってくれました。


 病気でやる気が起きないときも、頑張らせてくれたのは、母親の存在でした。


 今、卒業証書を手にして、皆から1年遅れると思っていた卒業が、皆と一緒にできてよかった。そんな思いが胸を満たしています。


 4月から、私は専門学校に進学が決まっています。何より大好きだった、演劇の専門学校。体調崩すまで、やめる事ができなかった、演劇部。さっき、その演劇部の仲間から、「卒業おめでとう!」とメールが届きました。


 未来は拓けた。後は自分が精一杯やるだけ。


 この学校で過ごした1年間が、こんなにも重いものだと、卒業証書を手にした今、ようやく気付けた気がします。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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