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卒業の日に思うこと 作者:快新平

第1回   有島響子の場合
 今日、ようやっとこのウザったい高校生活とおさらばできるかと思うと、清々するわ。

 アタシは中学の頃から素行が悪くて、高校進学なんかしないって思ってた。だけどさ、担任のセンコーが、中学卒業するときに、
「有島。学校には学校でしかできないことがたくさんある。高校に行かないって選択は、確かに一つの選択肢だと思う。だけど、このまま社会に出たら、学校でできるたくさんの事ができないんだ。お前がどういう選択肢を選ぼうと自由だ。だけど、後悔はするなよ。」
なんて言うからさ。

ちょっと…。

ちょっとだけ、学校ってモンが惜しく思えたんだ。


 実際、中卒じゃ、就職もほとんどないから、アタシはバイトで、稼ぐしかなかった。中学卒業してから1年は、バイトと友達と遊ぶ事ばっかり考えてた。
 でも、やっぱ、なんか足りない気がして、思い切って、この通信制の高校を受験してみたんだ。


 面接あるって聞いたから、すごく緊張したけど、金髪を咎められる事もなくて、ただ、簡単な質問と、授業を何を取るかだけ決めさせられた。たったそれだけで届いた合格通知には正直驚いた。
 合格通知受け取った母親は、
「アンタでも、受かる高校あるのね。」
って、ほんの少しだけ笑った。


 でも、もともと学校が好きじゃないアタシは、ことあるごとに1週間に1日だけの登校をサボって、単位が足りなくて、何度か留年もしたし。バイト忙しくって、レポート間に合わなくて、督促出されたことも、しょっちゅうだった。


 でもさ、意外と楽しかったかも。学校。


 アタシの親はさ、アタシのこと、諦めてたみたいだけど、高校行くようになってから、母さんや父さんが、優しい目でアタシを見てくれるようになった。時には、アタシがレポートで困ってると、助け舟まで出してくれた。


 学校行事なんて、前はかったるくてしょうがなっかたけど、この学校の学校行事は、なんとなく楽しくて、意外と燃えたよ。


 結局、中学卒業してから6年。こんなにかかっちゃったけど、ようやくアタシも高卒になれたんだって思うと、ちょっと気持ちいいかも。
 この学校で、新しい友達も出来たし。
 うん、よかったかもな。


 高校卒業は、ガキだった、あの頃のアタシからの卒業。
 もちろん、まだまだガキだけどさ。

 卒業式、ちょっとかったるかったけど。
 アタシより、出席してくれた母親が、ワンワン泣いちゃったけど。



 この手の卒業証書が、なんか大切なモンに思える今日は、アタシにとって特別な日…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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