「俺」は、俺らしく生きたいだけなんだ。
「私」は、生きるのに少し不自由なんだ。
いつからだろう。私の心に、男としていきたいという感情が芽生えたのは。 「女」の自分が嫌いになったのはいつからだっただろう。
空を飛べない翼を失くした天使。
「私」は、自由になりたかった。
髪も短く切って、GパンとTシャツで、大地をけって走ってたかった。
今の「私」は髪を伸ばして、スカートとブラウスで、ピアノを弾いている。
「俺」らしく生きたかった。
自由な風のように、木々の間を縫って走りぬけ、空まで走っていきたかった。
結局翼を持たない「私」たちは、どうする事も出来ずに空を見上げている。
自由になれない籠の中の鳥のように。
結局縛られているんだ。「私」たちは。
常識と言う世間の目に。
普通と言う不平等に。
「俺」が生きるには、世間はちょっと冷たすぎる。
風にもまれて飛ぶ鷹のように勇猛な翼を「私」たちはもたない。
もううんざりした。あきあきした。
飛び立とう、世間の目なんか気にせずに。
普通と言う籠から飛び出して。
少し勇気はいるけれど、それでも。
「俺」たちは天使だ。
翼を失くした不器用な天使。
これからは「俺」が「俺」の普通になる。
さあ、飛びたて。
翼を失くした天使たち。
翼を失くした天使は自由に空を舞うこともかなわず
地面に舞い落ちるんだ。
それでもいい。
それでも「俺」は飛び立つ瞬間、一瞬の自由を味わうんだ。
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