■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

零れた音 作者:isaku

最終回   おまけ
和解というか、ともかく、長年の問題?も解決したことで帰宅しようという事になった。
すっかりと夜になってしまった帰り道。
二人は、それぞれが会っていない間の話をしていた。
織夜の警戒心はもう、ほとんど解けていて、克司との会話を楽しんでいた。
すると、唐突に織夜が克司に聞いた。

「そういえば、何で今日部活がなかったんだろう?」

そう、部室に誰も居なかったのだ、普段なら考えられない事だ。
超が付くほどの有名音楽学校の吹奏楽部が、何故だか今日は
誰一人音楽室に居なかった。その中には教員も含まれる。となれば疑問が生じる。

「ああ、それはですね、俺が今日は部活ナシにしますって言ったんですよ。」

一瞬、織夜の顔が強張った。

「・・・・ココの学校って、超が付くほどの音楽学校ですよね?」

「え?ああ。世間だとそう言われてますね。」

声が強張る織夜に対し、克司はのほほんと答えた。

「何で先輩の一声で、自主練すら誰もやってないんですか!?」

「さぁ?邪魔をすればどうなるか身をもって知ってるから、じゃないですか?」

さらりと言ってのけた克司。その顔は笑っていた。織夜の口元が引きつる。
またしても織夜の女の勘が警報を鳴らしている。
本能的に、克司から離れようとしたが、哀しい事に叶わなかった。

「逃げる事はないでしょう?傷つきますよ、俺。」

織夜の腕を掴み離そうとしない克司。本人は到って真面目に言っている。

「アンタ、何者だよ!!?」

織夜の絶叫が路地に響いた。
絶叫の後に駈け去る足音も響いたのはいうまでもない。

← 前の回  ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections