「え・・・・織夜が、女・・・・の子・・・・???!」
嘘・・・・織夜が・・・女の子だなんて・・・・!!
「あ・・・やっぱり気付いて無かったんですね。」
そういって、織夜はクスクス笑った。 こうやって笑ってると、女の子に見えなくも無い・・・・
「本当・・・に?」
「はい。脱ぎます?」
「!!?」
「冗談ですよ。でも本当にオレは女です。」
心臓に悪い。さっきの仕返しなのか、一人クスクス笑っている織夜。 警戒心がなくなりつつあるのは、俺が「おにいちゃん」だからかな? と思いつつも俺は大きな疑問を発見した。 ・・・・!待って!カナリ待て!!じゃぁ、俺って女の子に告白したんだ!? いや、別に女の子の方が男よりも全然良いけど!!
「先輩・・・オレの頭の上で思考ストップしないで下さい。」
「あっ・・・す、すみま、せん。」
言葉がどもる。頭の中で整理がきちんとできない。 でも、この状態は良くないだろうと答えを出し、織夜を腕の中から開放した。 織夜は軽く深呼吸をしてから、俺に視線を合わせた。
「先輩は、オレが男だと思って告白したんですよね?」
「え・・・ええ・・。」
じっと俺の目をみたまま織夜は更に話を続ける。 しどろもどろしながら、答える俺。情けない。 さっきの追いかけてた勢いは何処へいったんだろう・・・・。
「で・・・女であるオレに、もう一度告白しますか?」
・・・・つまり、俺は同性愛者、と思われてるワケですねこれは・・・。
「言っておきますけど。俺は健全男子ですよ。さっきも言ったでしょう。」
「だって、恋人になって欲しいて言ってたじゃないですか。男だと勘違いしながら。」
確かに言った。間違いなく言いったけれど・・・・・傍にいて欲しいという意味でだ。
「・・・・ヤマシイ気持ちは無かったです。ただ、傍にいて、笑ってて欲しかったんです。」
正直に言った。つまりは、子供の独占欲ととってくれた方が判りやすいかもしれない。 「弟を独占したい」と思う気持ちが強かったんだ。 昔も今も、織夜の事を男の子としてみていたからだ。
「家族がどうとか言ってましたよね?」
・・・今、ニヤリと効果音がつきそうな笑い方をしたように見えたのは気のせいだろうか?
「織夜の事、弟のように思ってたんですよ。俺は一人っ子だったから 織夜と話していたとき、一緒に居た時が本当に楽しかったんです。」
織夜みたいな弟が欲しかったと言う意味だったのに 「ふぅ〜ん」とか答えられて、なんだか未だに疑われているようだ。
「もう一度、今度は、女性である織夜に告白すれば、信じてくれます?」
「・・・・・本気ですか?」
はい、と俺は答えた。これなら正々堂々と胸を張れる。 さっき言ってた事も堂々といえるけれど、どうやら誤解生じるようなので・・・。 改めて、織夜に向き直っていった。
「恋人として付き合ってもらえますか?」
暫らくは沈黙が辺りを支配していた。 織夜は俺の目を見たままだ。
「オレは先輩が嫌いです。」
キツイ。さっきも言われた言葉。改めて面と向かって言われると辛い。 俺は俯いた。多分かなり、顔が皮肉に歪んでと思う。 そんな顔は織夜には見られたくない。
「だって、無条件でオレがやりたいパートを渡さなきゃならなかったんですよ!? あのフルートのパートやりたかったのに!!一年だからって、駄目押しされて!!」
「ええーと、今度の春のコンクールの事ですよね、それ。」
「そう!オレの実力も何も聞かないで一方的に決められたんだ!」
「ソレ、俺が辞退すればいいですか?」
「は!?何言ってんの!?それこそダメ!!」
一気に捲し立てる織夜。何でそこまで怒るんだろう?俺が抜ければ良いのに・・・ 織夜の実力は知ってる。入部初日に演奏していたのを聞いたから。 その時の曲が、昔俺に聞かせてくれたあの曲だったから。 昔のままの優しい曲、気持ちが温かくなれる、変ったというならばソレは たどたどしかった音色が、はっきりとしてきた事だ。力強くけれどどこまでも優しい音。 あの調子ならすぐ、部内で一目置かれるだろうと俺は思っていた。
「何故、ダメなんですか?」
「先輩の方が上手かったから。」
一言できぱりと言った。じゃぁ何で駄々をこねるマネをするんだ?
「先輩のさっきの曲、凄く綺麗だったから。オレはあんなふうに演奏できない。」
「・・・だから、俺のこと嫌いなんですか?」
上手く演奏するから、俺のことが嫌いと言っている気がする・・・・。
「先輩が嫌いなんです。おにいちゃんは好きです。」
えーと・・・・・???「理解できません」と俺は頭を垂れた。
「公倭先輩は嫌いです。変に強引で、変態チックなので。 でも、俺の作ったあの曲が、好きだって、言ってくれたおにいちゃんは好きです。」
「じゃぁ・・・・」
変態チックという発言を敢えて気にせずに期待の眼差しを織夜に向ける。 そして、俺の目の前には織夜が綺麗に笑っていた。
「恋と「お友達から付き合いましょう!」
恋人として付き合ってくれるんですね!と言えずに虚しくも 織夜のお友達宣言に遮られてしまった。
「お友達ですか・・・・。」
「お友達です!!」
嬉しげに笑う織夜を見ると、まずはそれからでもイイかと思ってしまった。 だって、本当に傍にいて欲しかったのだから。 その後手を繋ぎながら帰路に就いた。
そして一人、二度と彼女の奏でる音を、聞き逃すまいと
ずっと、傍にいようと母の形見のフルートに誓った。
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