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零れた音 作者:isaku

第3回   迫られたし・・・
「だぁぁぁ!!もう、しつこい!!」

叫んでる余裕なんてないけど、叫ばないとやってけない!
だって、いい加減うんざりだ!いつまでヤツはオレのこと追って来る気だよ?!
ヤツは涼しげな顔しながら、オレの全力疾走に付いて来る。
体育9のこのオレが!!

「俺も疲れましたよ、織夜君。YesかNoかで答えてくれればいいんですから。」

嫌だから逃げてんだよ!オレの女の本能が警報を鳴らしまくってるし!

「織夜君!!俺は言葉じゃなきゃ解らないんです!!」

アンタは、馬鹿なのか!!ってか、なんでオレなんだよ!!?
解らねー。オレの何がいいんだ?オレはそんなに男らしいのか?
イヤ、漢らしいのか?!

「織夜君待って!!・・・ちょっと、織夜危ない!!」

危ないのはお前の方だ!って切り返したかったけれど、それができなかった。
オレに向かって自動車が走ってきたからだ。



「織夜!!!」

ヤツが叫んだ。オレは、咄嗟に後ろへと跳び戻った。
と同時にヤツはオレの腕を思い切り引いてきた。
どうやら、無我夢中で走ったために、学校から出て道路に飛び出してしまったようだ。
危なかったと思う暇も無く、オレは気付いたのだ。オレは、ヤツの腕の中にいたのだ。
しまった。と思う時はもう、後の祭り。

「(ヤバイヨ、女だってバレる!?)」

内心カナリ焦っているオレを余所に、ヤツはホッとしたように溜め息を吐いた。

「よかった・・・間に合った。」

そういって、また強く抱きしめられた。
傍から見たらキモイ構図だろう。なんたって、野郎同士が抱き合って見えるのだから。
実は、オレの方がコイツより頭一個分背が高い。もしかしたら
駄々をこねている友人に、引っ付かれてるとも取れる構図かもしれない。

「早く離れてください!!」

「ダメ。離したら織夜は逃げるでしょう。」

くそっ!!バレてるし。どうやって逃げようか、ここはやはり
腹に拳を入れて・・・イヤイヤ。鳩尾を狙っていった方が・・・・

「全部口に出てますよ。」

「!」

「どうして、答えてくれないんですか?」

コイツは、眼を伏せて問い掛けてきた。
そんな事やっても、ぜんぜん可愛くも無いし、男がやるだけキモイんだよなぁ。

「オレは、男です。そして最大の理由が、先輩の事が嫌いです。」

ちゃんと答えたんだから早く離せよ!
先輩に対してこんな言葉使いは赦されないだろう、けれど
オレはこんな変人に構ってられるほど暇じゃないんだ。
しかし、先輩はオレを離すどころかもっと力を篭めて抱きしめてきた。

「ちょっ!?離せよ変態!!!」

「すみません。」

は?謝るくらいなら最初からこんな事しないでくれよ・・・。
何か、どっと疲れが押し寄せてきた。

「じゃ、はやく・・・・」

離せと言いかけたオレに対しコイツは

「織夜が俺の事を嫌いなの知ってます。俺のした事は織夜を傷つけた。」

・・・・?なんの話をしてるんだコイツ???

「こっち・・・来てください。お見せしたいモノがあるんです。」

腕が一瞬離された、逃げられるとも思ったけれどコイツは
オレの事を逃がすつもりが無くて、解いた腕の片方を、オレの左腕に回してきた。
流されるまま、オレはコイツに付いて行くしかできなかった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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