「だぁぁぁ!!もう、しつこい!!」
叫んでる余裕なんてないけど、叫ばないとやってけない! だって、いい加減うんざりだ!いつまでヤツはオレのこと追って来る気だよ?! ヤツは涼しげな顔しながら、オレの全力疾走に付いて来る。 体育9のこのオレが!!
「俺も疲れましたよ、織夜君。YesかNoかで答えてくれればいいんですから。」
嫌だから逃げてんだよ!オレの女の本能が警報を鳴らしまくってるし!
「織夜君!!俺は言葉じゃなきゃ解らないんです!!」
アンタは、馬鹿なのか!!ってか、なんでオレなんだよ!!? 解らねー。オレの何がいいんだ?オレはそんなに男らしいのか? イヤ、漢らしいのか?!
「織夜君待って!!・・・ちょっと、織夜危ない!!」
危ないのはお前の方だ!って切り返したかったけれど、それができなかった。 オレに向かって自動車が走ってきたからだ。
「織夜!!!」
ヤツが叫んだ。オレは、咄嗟に後ろへと跳び戻った。 と同時にヤツはオレの腕を思い切り引いてきた。 どうやら、無我夢中で走ったために、学校から出て道路に飛び出してしまったようだ。 危なかったと思う暇も無く、オレは気付いたのだ。オレは、ヤツの腕の中にいたのだ。 しまった。と思う時はもう、後の祭り。
「(ヤバイヨ、女だってバレる!?)」
内心カナリ焦っているオレを余所に、ヤツはホッとしたように溜め息を吐いた。
「よかった・・・間に合った。」
そういって、また強く抱きしめられた。 傍から見たらキモイ構図だろう。なんたって、野郎同士が抱き合って見えるのだから。 実は、オレの方がコイツより頭一個分背が高い。もしかしたら 駄々をこねている友人に、引っ付かれてるとも取れる構図かもしれない。
「早く離れてください!!」
「ダメ。離したら織夜は逃げるでしょう。」
くそっ!!バレてるし。どうやって逃げようか、ここはやはり 腹に拳を入れて・・・イヤイヤ。鳩尾を狙っていった方が・・・・
「全部口に出てますよ。」
「!」
「どうして、答えてくれないんですか?」
コイツは、眼を伏せて問い掛けてきた。 そんな事やっても、ぜんぜん可愛くも無いし、男がやるだけキモイんだよなぁ。
「オレは、男です。そして最大の理由が、先輩の事が嫌いです。」
ちゃんと答えたんだから早く離せよ! 先輩に対してこんな言葉使いは赦されないだろう、けれど オレはこんな変人に構ってられるほど暇じゃないんだ。 しかし、先輩はオレを離すどころかもっと力を篭めて抱きしめてきた。
「ちょっ!?離せよ変態!!!」
「すみません。」
は?謝るくらいなら最初からこんな事しないでくれよ・・・。 何か、どっと疲れが押し寄せてきた。
「じゃ、はやく・・・・」
離せと言いかけたオレに対しコイツは
「織夜が俺の事を嫌いなの知ってます。俺のした事は織夜を傷つけた。」
・・・・?なんの話をしてるんだコイツ???
「こっち・・・来てください。お見せしたいモノがあるんです。」
腕が一瞬離された、逃げられるとも思ったけれどコイツは オレの事を逃がすつもりが無くて、解いた腕の片方を、オレの左腕に回してきた。 流されるまま、オレはコイツに付いて行くしかできなかった。
|
|