零れた音

作者：isaku

第1回 　 え・・・マジで?

オレの名前は、蕗城　織夜（フキギ　オルヤ）　生物学上は女です。 でもワケありで、男子の制服着用で学校にかよってます。 ってか、オレの夢を叶える為に自分から望んでやってるんだけどね。 「付き合ってください」 「はいぃ？」 オレは自分の耳を疑った。 ここは、音楽学校で超有名な某私立男子高校 女にもかかわらず、オレはここに今年の春入学してきた。 勿論、推薦入試で！ちょっとごたごた （やっぱり女のオレが男子校はマズイとオヤジが煩かったんだよね。） もあったけど無事に終えて うきうき気分でさぁ授業だ！と意気揚揚としていた。 授業の半分近くが大好きな音楽でオレは薔薇色の高校生活が 送っていけると信じていたのに・・・・・現実はそんなに甘くなかった。 そう、今のこの状態が物凄くヨロシクナイノダ。 夕暮れ時の音楽室、今日は吹奏楽部の活動はなく、ここには人間二人しかいない。 一人はこのオレ、そしてもう一人が今し方告白とも取れる言葉を発した オレの二つ上の先輩（つまりは三年の）公倭　克司（キミワ　カツシ）。 変な名前の先輩だ。因みに、オレはコイツが大嫌い。 何故って、コイツがオレの大切なパートを横取りしたんだよ！！ 実力主義のこの学校では、一番うまい奴がパートをやるのには 文句なんてつけないさ！けれど、コイツの場合無条件でパートを渡さきゃならなかったんだ！ たかだが、全国にいって、最優秀賞をとったからて、みんな贔屓しすぎなんだよ！！ 今まで積み上げてきたオレの努力はどうなるってんだ！ 中学の頃のオレだって全国へはしっかりと出場したし文句なしの成績を修めてきたし 最優秀賞だて獲得したのにもかかわらず、あっさりと 周りのヤツラは、この男にパートを渡しやがったんだ！！ 「何処へ付き合えばいいんですか？」 あぁ、もう！早く帰りたい！一秒だってコイツの顔を見たくない！！ 「何処って・・・そうではなくて、俺と恋人として付き合って欲しいんです。」 思考回路が真っ黒になった。 「え・・・？う・・・？？」 嘘だろ？だって、オレが女ってバレたのか・・？ いや、そんなわけない！ちゃんと隠してきたし、ボロをだしてない！！ 言葉にならない言葉がオレの口からでてきた。 オレと付き合う？何なんだよコイツ！？ オレは今男子として、ここの男子校に通ってるんだぞ？？ 何この男、実はソッち系の人なの！！？ 『恋人として付き合って欲しい』？冗談じゃない！！ 頭の中が一瞬ストップしたけれど、次第に一つの答えにたどり着いた。 あぁ、きっと何かの罰ゲームで言わされてるんだ。 そうだ、きっとそうに違いない。真面目で通ってるこの男が人の道を誤るなど･･･ 「先輩、何かの罰ゲームですか？」　　　 一時この学校でソッチ系の罰ゲームが流行ったし オレも冗談でこの罰ゲームをやったこととかあるし、うん。きっとそうだ。 「本気です。冗談に見えますか？」 コイツ・・・変人なんだ・・・・・。 他人がこんな事を言われてたら、オレ間違いなく笑顔で、お幸せにぉと言ってたよ・・・・・。 だって、そいつらは冗談で、本気ではなかったし・・ でも、オレの目の前にいるコイツ、公倭　克司の眼は鋭く 穏やかに歪められている口元とは反対に、冴えていて本気だど嫌でも解ってしまった。 狼狽するオレに、コイツはゆっくりと近付いてくる。 そうしてオレは窓側に追い詰められた。 ガラッ----！！ オレは窓を勢いよく開けて、そこから全力で逃げた。 幸い、オレの学校の音楽室は一階にあり更に幸いな事に校庭に面している いつもなら、窓開けると風が入ってきて、楽器の中に砂とか入り込むから嫌だったけど このとき程、音楽室がここで良かったと思ったことは無い。 逃げるのには最適だ！ オレは振り向かずに叫んだ。 「オレは健全な男子だ！！他を当たれ、他を！！！」 男子という単語を特に強調した。 本当は女だけど、ここでバレるわけにはいかないからだ。 叫んだ後、今度こそ本気で逃げきりモードにした。 捕まったら何をされるか判らないと本能が訴えてきたからだ。 音楽室に残っている影、--公倭　克司は軽く息を吐いていた。 「ストレート過ぎだったかな。」 克司から出てきた言葉は軽いもので、さっきまでの雰囲気を微塵も感じさせなかった。 「追いかけるべきか・・・・運動は苦手なんだけど、ちゃんと返事は欲しいし。」 また軽く息を吐くと、織夜が逃走した窓に手を掛け、ひょいと外にでた。 勿論織夜を追いかけるために。 公倭克司　18歳　性別♂　同性愛者疑惑あり 蕗城織夜　16歳　性別♀　ワケありの男装少女 両名共に、某私立男子音楽高等学校在校。

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections