【逃がさぬ、行かせぬ】
生ぬるい風と共に、何かの声が重なる。
【お前なぞに渡しはせぬ!】
憎しみと怒りの入混じる声が段々と近付いてくる
「雨宮、一旦この屋敷から出るぞ、走れるか?」
「は、走れる」
言い終わる前に手を引かれた。そして一番近くの窓まで走った
「きゃぁっ!!?」 「うゎっ!?」
けれど、後一歩という所で、床が外れ 私とコマ坊は、下へと落ちていった。
【逃がさぬ、赦さぬ】
私達が落ちた穴の真上から 生ぬるい風に混じった声は吐き捨てた。
「痛ぃ」
今度は、キャッチしてくれなかったみたい 当り前か一緒に落ちたんだし、コマ坊運動神経オカシイし。 それにしても暗い・・・
「くそっ!」
隣からコマ坊の声が聞こえた。
「先生、そこ居るの?」
「ああ。」
チクショウ、と苛立たしげに言葉を吐き捨てる。 コレって私の所為になるのかしら?
「ご、ごめんなさい」
一応謝っておこう。謝って済む問題でも無いけど 私が重たかった所為で、床が抜けた気がする。
「謝るなよ。こういう事態を予測できなかった俺に非がある。」
何?
「やっぱり、あの裏門の木じゃ歌姫の霊質を押えられなかったし 急拵えの封印じゃぁ高が知れてた!ちゃんと結界張っときゃ良かった!!」
歌姫?レイシツ?押えられなかった?結界??
「したら雨宮を巻き込まずに済んだのに!! くそぉ!マスターとして、イヤ、いち教師としてなんて事を・・・」
巻き込む?マスター?
「兎も角、お前は絶対に何とかして戻してやるから。」
「ちょっと待て。何の事かさっぱり判らない!」
さっきから、コマ坊は何を言ってるの? 全部自分の所為みたいに聞こえるんだけど
「だって、全部俺の所為だぜ?」
何この人、いきなり幼児化してない!? 拗ねてそっぽ向かれても困る!
「お前が後つけてたの知ってて、オルゴール木の上に置いたんだぜ? あの木は特殊な守護霊いたから何とかなるって思ったのに!! 中身確認した後に歌姫さんに体操られるとは、予想だにしなかったけど。」
「・・・後つけた事、気付いてたの?」
「気配ぐらい読める。でなきゃマスターなんてやってられない。」
普段の間抜けは何処へやら、言ってる事はカッコいい?
「一先ず、出口さがさねーと」
「先生って一体何者なんですか?」
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