あの時のオルゴールの曲が 歌姫さんの歌が、頭の中をリピートする
「------、-----、---、-----♪」
「ケーカ♪何歌ってんの?初めて聞くわねそれ」
「知り合いの、歌・・・」
「随分と淋しい歌ですなぁ」
綾乃は暫らく考える素振を見せた
「ケイカ、恋煩いでもしてるの?」
何を、私が?コマ坊に?恋煩い???
「うわぁ、図星?図星なの!?」
水を得た魚のように生き生きと聞いてくる・・・ 違う、断じて違う・・・ハズ ココはスぱっと切り返さないと、綾乃がしつこく聞いてくるのに!!
「お〜ら、お前ら席につけ〜」
やる気の無い声が教室の入り口から聞こえた コマ坊の代わりの先生が今日も来た この三日間一度もコマ坊を見かけていない 学校を風邪と言う事で休んでいるのだ・・・
「うげ・・・数学の田山じゃん。なんだぁ今日もコマ坊休みかぁ。 コマ坊の授業好きだったのになぁ、特にあのずっこけっぷりが・・・」
「また物理の先生があのオヤジに・・・」と愚痴る けれど、私は綾乃の「好きだった」発言に気を取られた
・・・マジで?
どうか 置いていかないで
どうか 私の元に 帰って来て
どんな姿になっても どんな姿であっても
逢いたい それが 私の たった一つの願い
頭の中を歌がリピートする
「重症だァ・・・」
「何が?」
頭を抱える私に、綾乃は能天気に答える その日の授業もそこはかとなく過ぎていった
放課後、綾乃に「パフェ食べに行こ!」と誘われたけど やっぱり行く気にはなれない、ってか帰って寝たい、目が疲れるのだ
コマ坊とオルゴールの件から三日経って 最初は夢か冗談か、兎も角不安だった 学校に来て確証がもてた
---夢じゃない
この三日間、時々幽霊が視えるのだ
「まただ・・・」
昇降口に老婆の霊が傘を持って立ってる 溜め息が出る、私が霊に気付けば霊の方も私に気付く その老婆は軽く会釈をくれた、私もそれに習う
「いろんな意味で疲れすぎてる・・・」
重たい足取りで正門へ向かうと・・・
「人だかり?」
「あ、ケイカ!」
「綾乃、何この人だかり・・・あああ!!!?」
人だかりの中心にひょこひょこ揺れる白い頭
それを見つけて、おもいきり叫んだ 視線は一気に私に集るけど気にしちゃ居られない! 何あの格好?!コマ坊が!!? いつものみすぼらしい格好ではなく 若者!って感じの服に・・・が、眼帯!? ・・・あ、左右目の色違うからかな?瓶底眼鏡はすっ飛んだし
多分、否。絶対に私以外コマ坊って判らないだろうな
「雨宮ぁ!」
コマ坊が私に気付いて、声を掛けてきた 手を振りながら、ものすっごい爽やかな笑顔を付きで
女子から黄色い声があがる そして嫉妬交じりの視線が私を射抜く・・・ でもそんな事は気にしない 私は思いっきり
コマ坊に抱きついた
「なんで、連絡くんないの!!?」
「仕事は入っちゃって・・・あは。」
はぁ?教師の癖に副業を赦されると思ってるの!!?
「仕事ぉ!?」
「だって、家業なんだから仕方ないだろ・・・」
コマ坊は不貞腐れたように口を尖らせる また、女子の黄色い声があがる・・・うわぁムカツク
「家業なんだ・・・」
「何だよ、約束を守りに来た俺に対して、その冷たい視線は?」
約束・・・忘れてなかった ちょっと、かなり嬉しいかも・・・
ニヤニヤと顔が崩れている
「ケイカちゃ〜ん?そこの美形なアルビノさんは誰かな〜?」
・・・・しまった忘れてた、ココは学校の正門だった事を
「ははは・・・逃げるわよ!」
乾いた笑いの後に、コマ坊に向かって言う コマ坊は「何で?」って眼で訴えてきたけど、無視。
コマ坊の手を握り、学校の外へダッシュ!!
私達は走った
二人で 手を繋いで
帰ってきた この人が 私の元に
優しい歌が聞こえた気がした
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