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私とコマ坊 作者:isaku

第12回   別離
持久力はある方だと思ってたけど・・・

「いつまで続くのこの階段!!?」

歌姫さん達が昇天した後、私達は脱出すべく色々と歩き回ってた
見つけたのが螺旋階段、コレを登れば上に行けると思ったのに!

「・・・填められたな」

填め?やっぱり、コレは罠なのね!
数分経っても登り切れない
考えてみれば、幾らデカイ屋敷とは言え二階建
地下を入れたとしても高が知れる見上げればちゃんと上の階が見えるのに!

最悪・・・マジで疲れるだけだ
コマ坊が手を握ってなかったら発狂してたかも

「大丈夫か、雨宮?」

「ダイジョーブ、デス」

コマ坊の綺麗な赤と青の眼がすまなさげに揺れた

「すまん。俺がもっとしっかりとしていれば」

「ぐだぐだと・・・私は平気ですってば!!」

「だけど・・・」

くわぁ!!何だこの女々しさは!!?


「謝るくらいなら、何か奢ってください!それでチャラにしますから!!」


これ以上コマ坊を落ち込ませない為に言ったけど
まだダメみたい・・・コマ坊らしくない笑顔が返ってきた
やだなぁ。さっきみたいな笑顔の方が好きなんだけど・・・っと話を変えよう!!

物理の成績を上げてくれと言ったら、どつかれた
けど、やっと笑った。うん、やっぱしこっちのコマ坊の笑い方がイイ
二人で笑い合って、気を取り直した時、異変が起きた


どごごごごごご


「!」

「何か、変な音?」

コマ坊に手を引っ張られた

「えっ!?」

「ヤバイ!本気で殺す気だ!走れ!!」

殺す気?!!
コマ坊は私を叱咤する。捕まれば最期って感じ
嫌な予感がして後ろを見れば

「階段が崩れてる!!?」

砂で作ってあったように簡単に階段が崩れた!
コマ坊は時々壁に手をつきながら走ってるけど
大丈夫?!




「ココだ・・」

コマ坊は壁に手を付いたままポツリと呟く
私の息は切れ切れで、疲れもピークを超えてる

「《ニルヴァーナ》」

聞き慣れない言葉をコマ坊が発する
すると、壁が消え代わりに光が差し込んできた

何!?

「雨宮、ココから走って出ろ絶対に振り返るな。
何があっても絶対に。今度こそ俺の言った事を守れよ」

階段の崩れる音が迫ってくる
握られている手が少し痛かったけれど
その痛みにも安心を覚えていたのも事実だ

「先生は、残るとか言わないですよね?」

自分の声が震える
何でこんなに震えてるんだろう?


「残る。残って、アレを何とかしないと今後のためにならない」



「一緒に、行けないんですか?」


自分の言った意味が判らない

私がコマ坊に付いていってはいけないのか?
と聞きたかったのか、はたまた
私とコマ坊で一緒に逃げてはいけないの?
と聞きたかったのか、良く判らない


「帰ったら、何か奢ってやる・・・」


だから一人でいけ・・・遠まわしの拒絶の言葉
繋がれていた手が、温もりが離れていく
不安が、寂しさが私の胸を掠めた

「雨宮?」

何も言わない私にコマ坊は不安がる
尚も音は近付いてくる、時間が無い。
コマ坊一人なら、何とかできる・・・私は足手まといなんだ・・・

「あま・・」

「・・・・・ってね・・・」

「は?聞こえ・・・」


「ちゃんと奢って貰うから、覚悟しといてね!!」



面と向かって、言えなかった
「ちゃんと帰って来てね」
言う時になって、怖気ついた

だから走った、光の在る方へ
振り返らない、コマ坊の言った通り


無事で ちゃんと帰って来て 私の元に


そう願いながら、私は走った


気が付けば、学校の裏門の木の下に立っていた

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Novel Editor by BS CGI Rental
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