「そう言えば、こ、先生はさっきまで何処に行ってたんですか?」
危うくコマ坊と呼ぶところだった・・・
「ん?だから歌姫さんの依頼を遂行すべく・・・」
「依頼ってなんですか?」
「歌姫さんは惚れた男に会いたかったんだよ」
ああ。だからか・・・ あんなに悲しい歌を歌っていたんだ
「で、コレが男の魂が定着してるヤツ」
「ライター?」
コマ坊は、ライターを軽く振る すると燈っている火がふわりと揺れる 確かに古めかしいけど・・・戦時中にライターなんて
「そ!しかもこのライター、母親から貰ったモノらしくて 一番長く共に在ったモノだから、憑依しやすかったんだろうな」
それじゃぁ、オルゴールに憑いてる歌姫さんは・・・
「また会えたんだ!」
コマ坊は微笑んだ、とても優しい眼差しで 向けられたのはオルゴールだったけど それでも・・・私も釣られて微笑んだ
私は持っていたオルゴールをライターに近づけた オルゴールの蓋が開き、人形が回り出す
『やっと・・・貴方に・・・』
人形の、歌姫の声が震える
『会えた・・・やっと・・・』
コマ坊の持つライターの火が揺れ それから軍服を着た男の人の影が現れる
『会えた・・・君に』
この人が、歌姫さんの思い人・・・
男の人に答えるように、オルゴールからも人が 歌姫さんが現れた。綺麗な、綺麗な人
『もう離れたくない・・・』
『ああ。二度と離さない』
二人は互いを抱きしめあった
「再会邪魔するようで悪いんだけど、そろそろ逝ってくれ。」
な!?
「ちょっと!?」
「二人であの世に逝った方がイイだろう。また引き離されんぞ?アンタの母親は執念深い」
だからって、もっと物言いがあるでしょう!?
『はい。お世話になりました』
男の人は頭を下げる
『有難うございました、無理なお願いをしてしまって・・・』
「全くだ。雨宮に手を出された時は肝が冷えたぜ・・・」
何言ってんのよ・・・
歌姫さんもコマ坊に頭を下げる そして私にも
『貴女もありがとう、私の我侭に付き合せてしまって、ごめんなさい。』
「そ、そんな事無い、ですよ!やっぱ人間、好きな人と居るのが一番幸せですし!!」
『『有難う』』
二人からお礼を言われた。
二人が段々翳んでいく、あの世へと逝ったんだ。
「うっし。俺等も出口探すぞ。」
コマ坊って空気が読めないのかしら?
「もう少し感動に浸らしてくれても・・・」
「ンな事言ってる暇ねーぞ」
どういう意味?
「ココにはまだ、男の母親が彷徨ってるんだぜ? しかも俺等は歌姫さんの願いを叶えたんだ。母親にとっちゃぁ、目の敵だろ」
「ヤバイって事ですよね・・・」
「ああ、俺一人なら多少荒くてもいいんだが、雨宮居るし」
悪かったわね、首突っ込んで!
「安心しろ。お前だけはちゃんと守ってやるから。」
「!?」
そう言って私の頭を撫でた 固まっちゃうよね、いきなりそんな事されたら
それから、また手を繋いだ。
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