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私とコマ坊 作者:isaku

第10回   告白
返事がない。聞いちゃいけない事だったのかな・・・
カチと軽い音がした後、明かりが燈った。
ライターを点けてくれたみたい。
そしてコマ坊がゆっくりと話し出す

「戦時中の事だったらしい。」

とある酒場の歌姫が、身分違いの恋をした
二人の想いは互いに届いた
けれど、男の親はそれを赦さなかった。
二人の仲は引き離され二度と会わせないとも言われたらしい
しかし男は諦めなかった
「戦争で手柄を立ててくる、だから彼女を妻に迎えたい」
男は必死に訴えた
「それが無理なら、それすら赦されないならこの家を出て行く」
とうとう両親は折れた、そして男を戦地へと送った
男は戦地へ行く前、自分で作った最初で最後の贈り物を歌姫に贈った

「それがこのオルゴールなわけ」

「最初で最後ってことは・・・」

「親の方で色々手回ししたみたいだけどな。前線遠退かせたり
比較的設備のマシな所に配属させたり、優遇したらしいが・・・」

何じゃそら・・・

「全く、逆恨みもいいとこだ。」

逆恨み?

「男が死んだ事をその親は、歌姫さんの所為にしたって事。」

歌姫さん。さっきもそんな事言ってたなぁ
コマ坊は私が胸元に抱えていたオルゴールを指差した。

「このオルゴールに?」

「そっ。オルゴールに憑いてる。」

呪いじゃないのか。

「で・・・先生は?」

「俺は、マスター・・・闇を屠るモノ」

闇を屠るモノ?

「人に憑く悪霊だの、害を成す悪魔だのを仕留める
俗に言う陰陽師とか退魔師とか、悪魔狩りみたいなモン。」

・・・何を馬鹿な事を
って言ったかもしれない、ここに来る前なら。

「そうなんだ。でも私が聞きたいのは、何で先生が白髪になっているかって事です。」

気になってしょうがない・・・
学校だとコマ坊の髪はブラウンよ?
眼は瓶底眼鏡で判らなかったけど・・・

「地毛だ。力を使うと戻っちまうんだよ。言っとくが、目玉も自前だかんな。」

「・・・ハーフっすか?」

「っぶ!・・・」

素朴な疑問を言っただけなのに
噴出された・・・コマ坊の癖に生意気な!

「ほら手だせ」

「手?」

「暗いし何が起きるか判らないし。ここ、意外といっぱいいるんだぞ」

意外といっぱいいるって
主語が抜けてるんですけど

「謹んでお手をお借りします・・・」

少し躊躇いがちに握ったけれど、コマ坊がしっかりと握り返してきた
・・・コマ坊の手は温かいな

私達は歩き出した、真っ暗ではなくなった道を。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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