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彼女の闘い 彼らの苦労 作者:isaku

第5回   彼女の本心 彼の想い

電話にでた榊崎は、青い顔を更に青くさせカクカク首を揺らしている。
そして、ちとせとさくらに「悪いな。ちょっとこれから仕事が・・・・」
と言って早々に引き上げていった。
俺に挨拶していかないのはいつもの事だが、
倭に挨拶しないのは、多分、否きっと倭が実は俺似なのだと感じたからだろう。
・・・・・・これって差別だよな・・・・・
もう二度と、ヤツを家に上げるのはよそう・・・子供らの教育によくないからな。

「おにー様、帰っちゃったね。」

「・・・・午後はゆっくりできるな。」

斬り付けられたソファーをそのままに、俺とちとせは腰掛けていた。
冷め切ったコーヒーを啜り、俺は一つ溜め息を吐いた。
午前中だけで、どっと疲れが溜まったからだ。

「しかし、倭は頭がきれると言うか、腹黒というか・・・・」

居間で遊ぶ我が子たちを見る。
今は積み木で、二人一緒に遊んでいるようだ。
しかし、純真無垢(?)である筈の子供が、いい歳した大人を笑顔で脅したのだ
ソレが自分の子供となれば将来を心配してしまう。

「そんな事ないわ。だって、アレはおにー様が悪かったんだもの。」

「は・・・・?」

俺は間の抜けた声を出した。
子供達に向けていた視線を、隣にいるちとせに移した。

「だって、おに-様がシザクの事斬り付けてきたのよ?!怒らない方がおかしいわ!!」

・・・・・・・・・・・・・・
その話を聞く限り、倭が腹黒い思考になったのは、俺の所為?

「つまり、榊崎のヤツが俺の事を邪険に扱うから、倭は怒って仕返しした、と?」

「そんな感じじゃない?あ、でも半分は嫉妬も混じってたかもしれないわ。」

ちとせの言葉に、俺は首をかしげる。

「嫉妬?倭がか??榊崎・・・イヤ、誰にだ?」

「ほら、カラスマ(?)さん。さくらを取られるかもしれないから・・・・・」

「オイオイ。まさか・・・・そんな事ぐらいで・・・・」

確かに、さくらの発言に、ツッコミをしていたが・・・・・なぁ?
もしそれが本当なら、榊崎のヤツは、八つ当たりされた事になる・・・・・哀れ。

「あーあ・・・ライバル多いいなぁ・・・。」

・・・・・・ハイ?

「ライバルって・・・何のだよ?」

呆れながらも、疑問を口にした。


「だって、さくらはシザクにくっ付きたがるし。

 さくらに好きな人ができれば、少しはシザクから距離を置くかなぁって・・・

 そしたら、シザクの隣は私が独占できるでしょ?自分の子供に嫉妬しなくて済むのに・・・

 それなのに倭ったら、さくらの事好きだからって、他の男に渡したくないからって・・・・・・・むぅぅぅ。」


子供二人を産んだとは思えない、なんとも少女らしい表情をするちとせ。
俺は、しばし見惚れてしまった。
・・・・・まだまだアオイな、俺も・・・・・。

「さくらを誰かの嫁にやるのは、少し淋しいかもな・・・」

そう言うと、ちとせは恨めしげに俺を見てきた。
本当に独占翼が強い。俺もコイツの事を言えた義理じゃないけれどな。

「でも、今生の別れでもなし、何より、ちとせが俺の傍に居てくれるんだろう?」

「・・・・・うん。」

俺の言葉に、納得していないがらも頷いてきた。

「さくらも倭も、俺たちの子だ。愛しいと思う。でも俺が想うのは」

本当は、こんな台詞を吐くほど、ガキでも盛ってる訳でもない。
ただ、ただ知っていて欲しかった。お前だけが、焦がれているんじゃないのだと。
    


           「本当に愛しく想うのはお前だけだ、ちとせ。」



               がばっ!!!!!!!!!
                  ぺちっ!!!


         「うっぐ!!?「シザク大好きっっっっ!!!!!!!!!!!」


ちとせが俺に襲い・・じゃなくて、抱きついてきた。
その拍子に、俺はソファーに倒れこんでしまった・・・突然の事は言え情けない・・・・。
しかし、ちとせが抱きついた音と重なって、何か軽い音が聞こえたような・・・・
俺は辺りを見回した、不思議に思ったからだ。
すると・・・・


「やまとぉ?つみきさんがみえないよぉ。」

「ちょっとまっててね、いま 取り込み中 だから。」

「・・・?・・・つみきさんがぁ?」

「そうだよ 積み木さんが ね・・・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・あの軽い音は、倭がさくらの目を隠した時の音だったのか・・・
まぁ、確かにこんな格好をさくらに見られたら、またちとせと喧嘩しそうだしな・・・

俺の視線に気付いた倭は、にこりと笑いかけてきた・・・・

     ゾクッ-------------!?

い、今・・・・・冷たいものが背中を這ったような・・・・


「さくら、にかいにいこうね。」

「ヤッ!・・さくらつみきさんとあそびたい!!」

「にかいでイイモノみせてあげるから、ね。」

「むぅぅ。わかった、おにかいいく。」

「ん。いいこだね。」

二階に行き様、倭が口パクで『 終わったら呼んでくださいね 』と言ってきた・・・


・・・・・・マジで、我が息子ながら恐ぇ・・・・・・


こうして、俺たち家族の休日が過ぎていったのだった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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