電話にでた榊崎は、青い顔を更に青くさせカクカク首を揺らしている。 そして、ちとせとさくらに「悪いな。ちょっとこれから仕事が・・・・」 と言って早々に引き上げていった。 俺に挨拶していかないのはいつもの事だが、 倭に挨拶しないのは、多分、否きっと倭が実は俺似なのだと感じたからだろう。 ・・・・・・これって差別だよな・・・・・ もう二度と、ヤツを家に上げるのはよそう・・・子供らの教育によくないからな。
「おにー様、帰っちゃったね。」
「・・・・午後はゆっくりできるな。」
斬り付けられたソファーをそのままに、俺とちとせは腰掛けていた。 冷め切ったコーヒーを啜り、俺は一つ溜め息を吐いた。 午前中だけで、どっと疲れが溜まったからだ。
「しかし、倭は頭がきれると言うか、腹黒というか・・・・」
居間で遊ぶ我が子たちを見る。 今は積み木で、二人一緒に遊んでいるようだ。 しかし、純真無垢(?)である筈の子供が、いい歳した大人を笑顔で脅したのだ ソレが自分の子供となれば将来を心配してしまう。
「そんな事ないわ。だって、アレはおにー様が悪かったんだもの。」
「は・・・・?」
俺は間の抜けた声を出した。 子供達に向けていた視線を、隣にいるちとせに移した。
「だって、おに-様がシザクの事斬り付けてきたのよ?!怒らない方がおかしいわ!!」
・・・・・・・・・・・・・・ その話を聞く限り、倭が腹黒い思考になったのは、俺の所為?
「つまり、榊崎のヤツが俺の事を邪険に扱うから、倭は怒って仕返しした、と?」
「そんな感じじゃない?あ、でも半分は嫉妬も混じってたかもしれないわ。」
ちとせの言葉に、俺は首をかしげる。
「嫉妬?倭がか??榊崎・・・イヤ、誰にだ?」
「ほら、カラスマ(?)さん。さくらを取られるかもしれないから・・・・・」
「オイオイ。まさか・・・・そんな事ぐらいで・・・・」
確かに、さくらの発言に、ツッコミをしていたが・・・・・なぁ? もしそれが本当なら、榊崎のヤツは、八つ当たりされた事になる・・・・・哀れ。
「あーあ・・・ライバル多いいなぁ・・・。」
・・・・・・ハイ?
「ライバルって・・・何のだよ?」
呆れながらも、疑問を口にした。
「だって、さくらはシザクにくっ付きたがるし。
さくらに好きな人ができれば、少しはシザクから距離を置くかなぁって・・・
そしたら、シザクの隣は私が独占できるでしょ?自分の子供に嫉妬しなくて済むのに・・・
それなのに倭ったら、さくらの事好きだからって、他の男に渡したくないからって・・・・・・・むぅぅぅ。」
子供二人を産んだとは思えない、なんとも少女らしい表情をするちとせ。 俺は、しばし見惚れてしまった。 ・・・・・まだまだアオイな、俺も・・・・・。
「さくらを誰かの嫁にやるのは、少し淋しいかもな・・・」
そう言うと、ちとせは恨めしげに俺を見てきた。 本当に独占翼が強い。俺もコイツの事を言えた義理じゃないけれどな。
「でも、今生の別れでもなし、何より、ちとせが俺の傍に居てくれるんだろう?」
「・・・・・うん。」
俺の言葉に、納得していないがらも頷いてきた。
「さくらも倭も、俺たちの子だ。愛しいと思う。でも俺が想うのは」
本当は、こんな台詞を吐くほど、ガキでも盛ってる訳でもない。 ただ、ただ知っていて欲しかった。お前だけが、焦がれているんじゃないのだと。
「本当に愛しく想うのはお前だけだ、ちとせ。」
がばっ!!!!!!!!! ぺちっ!!!
「うっぐ!!?「シザク大好きっっっっ!!!!!!!!!!!」
ちとせが俺に襲い・・じゃなくて、抱きついてきた。 その拍子に、俺はソファーに倒れこんでしまった・・・突然の事は言え情けない・・・・。 しかし、ちとせが抱きついた音と重なって、何か軽い音が聞こえたような・・・・ 俺は辺りを見回した、不思議に思ったからだ。 すると・・・・
「やまとぉ?つみきさんがみえないよぉ。」
「ちょっとまっててね、いま 取り込み中 だから。」
「・・・?・・・つみきさんがぁ?」
「そうだよ 積み木さんが ね・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・あの軽い音は、倭がさくらの目を隠した時の音だったのか・・・ まぁ、確かにこんな格好をさくらに見られたら、またちとせと喧嘩しそうだしな・・・
俺の視線に気付いた倭は、にこりと笑いかけてきた・・・・
ゾクッ-------------!?
い、今・・・・・冷たいものが背中を這ったような・・・・
「さくら、にかいにいこうね。」
「ヤッ!・・さくらつみきさんとあそびたい!!」
「にかいでイイモノみせてあげるから、ね。」
「むぅぅ。わかった、おにかいいく。」
「ん。いいこだね。」
二階に行き様、倭が口パクで『 終わったら呼んでくださいね 』と言ってきた・・・
・・・・・・マジで、我が息子ながら恐ぇ・・・・・・
こうして、俺たち家族の休日が過ぎていったのだった。
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