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彼女の闘い 彼らの苦労 作者:isaku

第3回   彼女の戦略
「あれー?どーしたの、シザクもおにー様も固まって??」

石化した俺たちに能天気な声をかけてきたのは、ちとせだ。
キッチンで、俺のためにコーヒーの準備をしていたんだった・・・。
お盆に、俺専用のカップが乗っかっている・・・お前、自分の兄貴の分くらい
茶でも何でもいいから煎れてやれよ・・・・一応、客?なんだから・・・

「さくらが、カラスさんのお話をしたんだよ。」

返事をしおくれた俺たちに代わって、倭がちとせに状況を説明した。
・・・・?・・・・カラスさん??何だ、倭も『からす』が誰だか知っているのか!!?

「カラスさん・・・・ああ!さくら、あの人の事好きなんだぁ。」

「うん!あいらびゅーなの!!」

元気良く答えるさくら。

「でも、カラスさんは他に好きな人がいるっていてたよ?」

それにツッコミを入れる倭。

「あらあら、さくらも大変ねぇ。」

ちゃかす、ちとせ。
娘のの成長っていうのか?さくらがモノに興味を示したりすると、ちとせは喜ぶ。
こういう時だけ、母親の顔をするんだよな。俺は、自分の顔が緩んでいくのを感じた。
不覚にも、さくらの「あいらびゅー」発言を一時忘れてしまった。

「だいじょーぶなの!!」

自信有り気に言い放つさくら。
榊崎の腕の中から立ち上がり、腰に手を当てながら、たからかに宣言した。
 

                「りゃくだつあいするの!!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイィィ?




「なんなんだ!?『からす』っていったい誰なんだ?!!畜生めが、俺のさくらを!!!」

「何処でそんな言葉を覚えてきた!?榊崎、誰がテメーのさくらだ!?一回死ね!!」

榊崎と俺の声が重なる。
あ・・・・・・・・・・・・頭が痛い!!
何処の馬の骨ともわからない、ヤローにさくらは好意を向けている。
はっきり言って不愉快だ。
見つけ次第叩きのめしてくれようか・・・・否、叩きのめすべし!

いや、待て、待て待て待て待て!!落ち着け俺!!
無茶やってた昔の自分に戻りつつあるぞ!落ち着くんだ俺!!

それも、今は置いておく、置いておくだけだ。
後で、きっちりと、榊崎のヤツにもお灸を据えておかねば・・・
それよりも、何処で『りゃくだつあい』って言葉を覚えてきたかだ!

「それなら、母さんが見てたドラマでさくらがおぼえたんだよ。」

・・・・・・犯人はちとせかよ・・・・子供の前でどんなモノ見てんだアイツ!?
・・・・・・・・ん?・・・俺・・今、疑問を口にしていたか??

「倭・・・・・なんで俺の考えが判ったんだ?」

「・・・・・ヒミツ。」

人差し指を口元に持っていき、軽く首をかしげる・・・顔が可愛い分その仕草も似合っている・・・
・・・似合っているだけに、何故かしら俺の背中を冷たいものが伝った。

「・・・・まぁ・・・聞かないでおく。しかし、さくらは意味を知らずに使ってんだろなぁ?」

「しってるよ、母さんがおしえてた。」


・・・・・ちとせのヤツ・・・三歳児になんつー言葉を覚えさせるんだ・・・・・。
俺は、不満を心の中で撒き散らしながら、『からす』が誰かを悶々と考えた。
俺の目の前では、さくらと榊崎の不毛な口論が続いている。

「さ、さくらちゃん、カラスってのは誰の事?俺の知ってる人かな?」

「う〜ん・・しょーちゃんは、しらないよ!」

「ど、どうして?」

「だって、ぱぱのおしごとなかまだもん!!」

「は・・・早乙女の・・・・・?」

さくらは、こくりと頷きニコニコ俺の方に笑顔を向けてきた。

・・・・・・は??
我が耳を疑う。俺の仕事仲間だと?!
俺の知り合いにカラスなんてヤツいたっけか?!!
俺は小説編集部部長って肩書きを持ってるが、仕事仲間を家に上げた記憶はないぞ!!?


「このあいだお家にきた黒尽くめの人だよ。」

倭が、俺の袖引っ張りながら言う。
それに頷くように、ちとせもカラカラ笑いながら言ってくる。

「ホント、真っ黒な人だったわよね。若いのに、サングラス似合ってたし。」

若いのにサングラスが似合っている・・・・・・・
真っ黒な人・・・・・黒尽くめ・・・・・・サングラス・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!!?・・・・・・・・

「烏丸か!!!!」

俺は、叫んだ。

今なら、青筋の三、四本軽く浮いているだろう。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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