「さくら・・・・・離れなさい。」
「やぁ〜。ぱぱとはそぶのぉ。」
麗らかな土曜日の午前。 俺は、スポーツ記事を読んでいた。そんな時 娘のさくらが俺の膝の上にちょこんとのかってきた。・・・・・ああ、癒される。 父親としては愛娘が構ってくれと、せがんでくる様は非常に嬉しい限りだ・・・・が・・・ なぁ? どう思うよ?二児の母親たる女性が恨めしげに俺のほうを見てくるのは・・ ・・・・正確に言えばさくらの方かもしれないが いや・・・愛されてるのかもしれないけどさ、何かこー・・・独占欲強くないか?
「倭、もう少しだけ母さん押えといてくれ・・・・。」
「はい。」
俺に、短く返事をしたのは息子の倭。 うん。何度も言うようだが、倭は五歳児だ。見た目もちとせ似にて可愛らしい。 親ばかじゃないからな?事実を如実に言ったまでだからな!
「ぱぱぁ。しょーちゃんいつくるのぉ?」
「さぁなぁ。連絡貰ったのがちとせだし、判らないな・・。」
しょうーちゃん・・・それは俺の義理の兄に当たる人物 つまりは、ちとせの実兄、榊崎頌護(俺より年下だが・・) さくらと倭の伯父に当たる人物だ。
「ちとせ、榊崎はいつ来るんだ?」
俺がちとせに声をかければ、『にぱぁ』と笑って元気良く答える。 何で、義理の兄を「義理兄さん」と呼ばず、苗字で呼ぶかと言うと 以前面白半分で言ってみたら、何処から取り出したのか、サイレンサー付きの銃を向けられた。 ・・・・・・・あの時は危なかった。対抗できる武器なんて、サバイバルナイフしか持ってなかったし・・ まぁ、経験豊富な俺だから何とか逃げきれたけどね。
「もうすぐ来るよ!」
ピーンポーン
「・・・・・・・」
うぜぇ・・・・本気で来やがった。
「しょーちゃんきたー?」
「さくら、おむかえにいこうね。」
俺が顔を引きつらせていると、倭がさくらを引っ張り玄関へ向かっていった。
「おに-様来るの早いよね。」
「ああ、まったくだ・・・・・」
俺は、吐き出すように言った。 普通朝の八時に家を訪ねてくるか? 非常識だろう、あの野郎・・・・。 俺は溜め息を吐き出し、ちとせに苦笑いを見せる。
「ちとせ、コヒーくれ。」
「うん!」
「人の妹を顎で使ってんじゃねーよ、年寄り。何様のつもりだ?」
うぁ・・・・・ 昔と変らぬ超低音ヴォイス。 入り口を見れば、さくらを腕に抱えたまま青筋を立てている、榊崎頌護がソコに立っていた。 ヤツの後ろには、ちゃっかり倭がいる。 ・・・・今日も一人できたのか・・・。ふ・・・嫁にも見放されか? その重度のシスコンを治さないと、いつか破局するぞアイツ・・・・
「年寄りだからだろ?それに、使ってるんじゃないお願いしてるんだ、旦那様として。」
俺とヤツとの間に、青白い火花が散った。
たっく。律儀に答えてやったのに、ホント嫌な性格しているな。
「俺は、お前がちとせの夫になったことを認めていない。お前の顔など見たくもない。」
「あーそーですか。俺のツラ見たくなきゃとっとと出て行け。」
お互い、声が低くなっていく。 流石に子供達がいるため、教育上よろしくない事はしない。 なんとも重たい沈黙が俺と、榊崎の間に流れた。
「おじさん、すわらないんですか?」
重たい沈黙を破ったのは、倭だった。 榊崎は倭を暫らく見ていたが「そうだね。」と笑いながら 俺の真正面に座りやがった。さくらを抱えたまま・・・・・。 倭は、俺の横に座り新聞紙を畳んで脇に寄せている。 ・・・・・本当にできた子だ。
「倭君は偉いな。誰かとは大違いだよ、まったく。しっかりものだね。」
コイツの性悪な部分を知らないやつらが見れば、『爽やか好青年』の笑顔を顔に貼り付けていた。
「おじさんは、シンブンシを広げたままにしておくの?」
ははは・・・・・榊崎のヤツ驚いてるし。
「んー・・畳んでおくね。」
「おじさんは、あたりまえなことをきくんだね。」
あ。榊崎のヤツ、今ちょっと顔顰めたし。 倭は自分が地雷を踏んだことに気付いてないし。
「倭君・・・早乙女ににてきたね。」
笑顔でさらりと言葉に毒を混ぜて言う榊崎。 倭は気付いていないようで、此方も笑顔で榊崎を見返す。
「ボクは父さんの息子だよ。にていてあたりまえでしょ。おじさんって変だよね。」
・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? 倭・・・・なんか、もしかして、倭って見た目はちとせ似そっくりだけど 実は中身俺似なんじゃない?昔の俺にそっくりだぜ・・・反抗期早そうでヤだなぁ。
「しょーちゃん、へーん。さくらもぱぱにー。」
意味も判らないままいってるんだろう。ニコニコしながら俺と榊崎を見ている。 さくらの発言に相当なショックを受けている。 「しょーちゃん、へーん。」にへこんでる。・・・・キモイな。 シスコンでロリコンか?!救い様がねーなぁまったく。
「さ、さくらちゃんは、俺のこときらいなの?」
おいおい、たかだか、「しょーちゃんへ-ん」っていわれたくらいで さくらに確認取るなよ・・・・ホント、ロリコン(決定)だな。
「ううん。しょーちゃんすきー。でも、ぱぱのほうがだいすきーvv」
あはははは、おもしれー。 石化したし。
だがしかし、俺も次のさくらの言葉を聞いて、石化した。
「でもね、からすさんがいちばん、あいらびゅーなの!!」
はい?
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