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彼女の闘い 彼らの苦労 作者:isaku

第1回   彼らの生活
疲れた体に鞭打って、暖かな我が家のドアのぶに手を添え、押し開いた。


・・・・・・・ハズなのにいったいコレは、どう言う事だろう?・・・・・・・・・
いや、入る事はできた。俺の家だしね・・・
でもコレは・・・・・朝とは全く違う風景がソコにあった。


             「・・・・・・・・・・」


あ〜・・・・なんつーか・・・俺の疲れは最高潮に達しているのに
コイツらは、俺を過労死させたいんだろうな・・・・・・。


      「ぱぱぁvvvvv」 「パパvvvvvvv」 「父さん」


左から順に、俺とちとせの娘さくら、以前よりも長くなった髪を一纏めにしたちとせ最後に息子の倭
俺を見つけるなり、コイツら-ちとせ、さくら-が寄って来た。


「ぱぱぁ、だっこぉ!!」

「ぱぱは、疲れてるからこれからママとお部屋に行くの!だからダメ!!倭と遊んでなさい!!!」

「やだぁ!!ぱぱがいいの!ぱぱぁ、だっこ!!」

「ダメ!」

「やだ!」

俺を無視して、ちとせとさくらが言い争っている。
さくらは判る。まだほんの三歳児だし、親の愛情を欲しっているのだろうから判る。
が・・・・何故ちとせが三歳児並みの口喧嘩をしているんだ?
やべぁ・・・眩暈が・・・・

「おかえりなさい、父さん。だいじょーぶ?」

「ただいま、倭。なんとかな・・・?」

他人が聞けば低レベルなしかし、本人達にとっては大事な言い争いをしている二人の横を
倭が音もなくするりと抜けて、俺の足元まで寄ってきた。
唯一、常識を知ってくれている我が息子よ・・・父さん本当に感激だぞ。
でも、五歳児でこんなにしっかり者だと父親としては少し不満だと苦笑いしてしまう。
倭がスーツの袖口をクイクイと引っ張る。

「あのね、あしたオジサンがおうちにくるんだって。」

「・・・・・・・まじか・・・・・。」

伯父さん・・・ちとせの実兄で、俺的調査によると重度のシスコン。回りも承知しているんだが・・
ちとせと俺が結婚する時に最後の最後まで反対した人物だ。
いや、今でも時々嫌がらせで仕事先に剃刀レターなんてモノを送ってくれる律儀な野郎だ
ふ・・・・いつの時代の人間なんだかな・・・・この借りは必ず返させて貰うぜ。

「うん。」

こくりと頷く倭と視線を合わせるべく、俺はしゃがみこんだ。
今日の疲れが、どっと押し寄せてくるそれに便乗して、苛立ちも覚えた
けれど、子供にそんな感情を露わに話すのは、教育上非常にヨロシクナイ。
なので悟られぬように少し、困った笑みを浮かべながら聞いた。

「もう一つ聞いてもいいか?」

問い掛ければ、しっかりと頷き返す倭。

「この部屋の惨状はいったいどういう訳だ?」

「お夕飯作ってる時にね、母さんとさくらがケンカしたの。
 今日父さんと一緒に寝るのは自分だっていってそしたら母さんが
  『パパの隣はママって決まっているの!!パパの隣で寝たかったら、ママを倒してからいきなさい!』
 っていってね、水鉄砲をさくらにかけたの。さくらも
  『ままに、ぱぱはわたさないんだからぁ!やまとでがまんしてよ、おとなのくせに!!』
 っていってね、クレヨンもってタイコウしたの、だからお部屋がぐちゃぐちゃになったんだ。」


・・・・・・水鉄砲VSクレヨン・・・・
           クレヨン!?
いったいどうやったら、ただの水鉄砲と子供が使っても害のないクレヨンで
リビングがぐちゃぐちゃになるんだ!!?謎だぞ!謎!!
いや、待て・・・・何、三歳児相手に大人気ないことしてるんだ、ちとせ!?
俺は目頭を軽く押した後、倭を背後にしこの惨状を作り出した連中に怒鳴った。


         「いい加減にしろ!この、はた迷惑母子が!!!」


すると、ぴたりと騒音がやむ。
俺を見てくるちとせとさくら、その目には怒られた時のショックで涙が溜まり始めている。

「な・・・・さ、さくらが悪いんだもん!シザクの隣は私が独占していいのに!!」

「ままがわるいんだもん!!いつも、やまととしかさくらねてないのに、さくらだってぱぱとねたいもん!!」

二人で同時に言ってくる・・・・・なんでタイミングがいいんだ・・・。

「あー・・・・判った判った。さくらと一緒に寝てやるから、ちとせお前諦めろ。」

「ヤダ!」

「却下。」

俺は、ちとせの言い分を一蹴した後
足元にいた倭の服を引っつかみちとせの方に渡した。

「倭、今日は母さんのお守り頼むな。おら、ちとせ我慢しろ。」

倭は宙吊りになりながらも「はい。」と答えてから俺の手の中からひょこんと飛び降り
ちとせの元へ駆け寄った。
ちとせはちとせで「う”〜」と唸りながら倭に引っ付いている。
倭のヤツ、何気なくちとせの頭を撫でてるし・・・・・・どっちが子供かわかんねーよ。

「う”〜・・・・・じゃぁ、シザクと一緒にお風呂は「倭、そいつを押えておいてくれ」

こいつの頭の中は、初めて会った時よりも退化している・・気がする。
さくらと喧嘩する時点で三歳児並みの考え方と思っていいんだろうな。

「ゆっくりどうぞ。」

倭・・・・お前、見た目はちとせ似なのに・・・・中身は立派に育って・・・
父さん嬉しいよ・・・・・・・・・マジで。

「ぱぱぁ!さくらね、ぱぱとおふろはいるーvv」

・・・・まぁ可愛い娘だし?問題はないだろう・・・あ・・でも
ちとせが煩そうだ・・・今も上目遣いで睨んできている・・・どうしたもんかな?

  「さくら、父さんはつかれてるんだよ。おふろぐらいゆっくりさせてあげないと
 
            さくらのこと嫌いにさせるよ?  

              それでもいいならボクはべつにいいけれど・・・・・ね?」


「ふにゅ!?そ、それはだめぇぇやだやだ!!」

「じゃ、で母さんといっしょにお片付けしようね?母さんも・・・父さんに嫌われたくないでしょ?」


・・・・・・あれ・・・・倭って俺の息子だよな・・・?
なんか・・・今・・・・・すごく・・・・いや、きっと疲れているから幻聴だったんだろう・・・

「あー・・・悪ぃな倭・・・。」

俺はさくらと倭、ついでにちとせの頭を撫でて風呂場へ向かった。
ん?何でちとせまで頭を撫でたかって?
ちとせのヤツが物欲しそうな眼でじーと見てきたからだよ・・・現に撫でてやったらニコニコ笑って
部屋の後片付けにいそしんでいる・・・・現金なヤツだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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