ツァルヴァーニス:レオトラード:アゲイジゲランは秘境の大陸にその名を馳せた薬師だ。 彼の薬師が作り出す薬はまさに奇跡! 万能と謳われ秘境の大陸の外まで伝えられるほどだった。 しかし、そんな薬師でも勇気をだす秘薬は作った事がない。 否、作りたいと思ったことは未だ嘗てなかったのだ、そう、この時ほど・・・・
今、彼は非常に悩んでいた、恐れていた、そして理解していた。 自分の前にあるこの扉を開けた瞬間に自分の寿命が半分は尽きてしまう事を
「けれど、こうして時間稼ぎしても、結果は悪くなる一方なんですよね・・・・フフフフ。」
暗い影を顔に落としながら、自嘲する様は、本当に見ていてて哀しくなる。 意を決して扉に手を掛けた・・・・・
ゴスッ!!
「はうッ!?」
「遅い。」
レオトラードの顔面に「遅い」といった人物の拳がめり込んでいた。
「俺はお前に、ウェンユーの港町まで来いといったよな? お前は、ソコまでなら精霊に連れてって貰うから平気だと、 ほざいたんだよなぁ?」
ぎしぎしとレオトラードの首を今にも絞め殺さんとするのは黒髪黒眼に白い肌の 幼い顔立ちの青年だった。
「ず、ずびばぜん・・・〜〜〜ぢょっど、ど、びじびばじょっでじまっで・・・」
「何言ってンのかわかんねーんだよ、このボケじじぃが!!」
首をがくがく揺すって、更に力を込める。
「ぐ、ぐるじぃぃでずべばびぼん。」
「べばびぼん、じゃねー!レガリオンだ!!名前を間違えるな!!しかも変な名前に!!!」
「はひー」
そう、レオトレードが訪ねようとしていた人物は、なんと この、大陸一恐れられているレガリオン:グィド:ディールその人のもとだった。 二人は、俗に言うところの『友人』というもののようだ。
「奥さんは平気ですか?まだ、産んでないみたいですけど・・・」
「万が一のことがあったら、お前は生きちゃいなーだろうなぁ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真面目にゴメンナサイ。 マジでやめてください。本気でその白い双剣向けないで下さい。痛ッ!!?き、切り付けないで下さいよ!!」
きゃーなどと叫んで逃げ回るレオトレードを、半分本気になって追いかけるレガリオン。 顔が子供な二人だけに、凶器さえ持っていなければ微笑ましかったかもしれない。
「ほ、ほら!赤ちゃんもうすぐ生まれるんでしょう!?お父さんが居なくてどうするんですか!!」
命からがら逃げつつ、レガリオンに現実を突きつける。 「む。」と唸ってから、双剣をしまい。こっちだといって、ついてくるように指示をした。 ほっと、息をつくレオトラード。
「何とか命がありました・・・危なかった・・・」
ポツリと呟いてから、レオトラードは気を引き締めた。 これから、新しい命と出会うために 友人の幸せな生活のために 惜しみない協力をしようと、一歩を踏み出した。
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