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薬師が行く 作者:isaku

第2回   〜承〜
「そうですか。ウェンユーの港町から・・・でもココって正反対のしかも山の中ですよ?」

薫りのよい茶をカップに注ぎ、レオトラードの前に音を立てぬようにそっと置く。
「どうも」と短く礼をいって注がれたばかりの熱いお茶に口を付け
口の中に広がる甘酸っぱい味を楽しむ、なんとも爽快な気分になる。
おや、これは3:7の割合でカトレットとイクノノの葉が調合されたいますね、フムフム。おいしいなぁ・・
等と、暢気に茶をすする。

「あはは・・・どうもワタクシは、度を越した方向音痴のようでして・・・お恥ずかしながら・・エヘ。」

お茶のカップを膝の上におき、片手で頭をがしがしかく。
セーバはニコニコしながら、大変ですねぇなどとほのぼのと言う。

「仕方ありませんよ。自覚している分なかなかましな方ではありませんか?」

少し含みのある言い草。
けれど、レオトラードは気にする風もなく、そうなんですかぁとほのぼのとのたまう。

「あ・・・」

「何か?」

ふとしたレオトラードの声に、律儀に返事をするセーバ。

「いえ、たいした事・・・・ではないと思いますが、何故男装など・・?」

しばし沈黙が訪れる。

「あ・・・・言いたくなければ・・・」

「いえ・・・私はこんな声ですから・・・・はは・・」

「・・・・・地声・・・じゃないんですね・・・」

「さらっと失礼な事を言ってくれますね。」

しばしの睨み合い




「「ふふ」」


「スミマセン笑ったりして・・・」

「いえ、久々に笑わせていただきました、私のほうこそ・・・ふふふ。」

和やかな雰囲気だった。どこか通じるものが在ったのだろう。
ふふふ、と笑いながらお茶の時間を過ごしていた。
しかしソレは破られた。


「領主さまだ!!あの狂人が来るぞ!!」


「え!?」

なんだと!?と驚いた様子のセーバを後ろに、声に反応して興味本位でレオトラードが窓際へ寄っていく。

「?」

外の方で若者が叫んだ。領主が来ると、たったそれだけ言ったのに
次に聞こえてきたのは、戸の締められる音。母親が我が子を呼び叫ぶ声。
どたばたと慌ただしく響く足音、ついには道には人一人も出ていなかった。

「・・・・な・・・・何なんですかこれは??」

呆然とレオドラートが呟く。しかしまた次の瞬間には、セーバがレオトラードの腕を引っつかみ
女性とは思えぬ力で引き寄せ、窓をぴしゃりと閉めた。
更に中が覗われぬ様にカーテンを閉め、ずいずい部屋の奥へと進んでいく。
ただ目を白黒させるしか、レオトラードにはできなかった

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Novel Editor by BS CGI Rental
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