「そうですか。ウェンユーの港町から・・・でもココって正反対のしかも山の中ですよ?」
薫りのよい茶をカップに注ぎ、レオトラードの前に音を立てぬようにそっと置く。 「どうも」と短く礼をいって注がれたばかりの熱いお茶に口を付け 口の中に広がる甘酸っぱい味を楽しむ、なんとも爽快な気分になる。 おや、これは3:7の割合でカトレットとイクノノの葉が調合されたいますね、フムフム。おいしいなぁ・・ 等と、暢気に茶をすする。
「あはは・・・どうもワタクシは、度を越した方向音痴のようでして・・・お恥ずかしながら・・エヘ。」
お茶のカップを膝の上におき、片手で頭をがしがしかく。 セーバはニコニコしながら、大変ですねぇなどとほのぼのと言う。
「仕方ありませんよ。自覚している分なかなかましな方ではありませんか?」
少し含みのある言い草。 けれど、レオトラードは気にする風もなく、そうなんですかぁとほのぼのとのたまう。
「あ・・・」
「何か?」
ふとしたレオトラードの声に、律儀に返事をするセーバ。
「いえ、たいした事・・・・ではないと思いますが、何故男装など・・?」
しばし沈黙が訪れる。
「あ・・・・言いたくなければ・・・」
「いえ・・・私はこんな声ですから・・・・はは・・」
「・・・・・地声・・・じゃないんですね・・・」
「さらっと失礼な事を言ってくれますね。」
しばしの睨み合い
「「ふふ」」
「スミマセン笑ったりして・・・」
「いえ、久々に笑わせていただきました、私のほうこそ・・・ふふふ。」
和やかな雰囲気だった。どこか通じるものが在ったのだろう。 ふふふ、と笑いながらお茶の時間を過ごしていた。 しかしソレは破られた。
「領主さまだ!!あの狂人が来るぞ!!」
「え!?」
なんだと!?と驚いた様子のセーバを後ろに、声に反応して興味本位でレオトラードが窓際へ寄っていく。
「?」
外の方で若者が叫んだ。領主が来ると、たったそれだけ言ったのに 次に聞こえてきたのは、戸の締められる音。母親が我が子を呼び叫ぶ声。 どたばたと慌ただしく響く足音、ついには道には人一人も出ていなかった。
「・・・・な・・・・何なんですかこれは??」
呆然とレオドラートが呟く。しかしまた次の瞬間には、セーバがレオトラードの腕を引っつかみ 女性とは思えぬ力で引き寄せ、窓をぴしゃりと閉めた。 更に中が覗われぬ様にカーテンを閉め、ずいずい部屋の奥へと進んでいく。 ただ目を白黒させるしか、レオトラードにはできなかった
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