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薬師が行く 作者:isaku

第1回   〜起〜
「げ・・・・迷った。」

フードを目深く被った少年は、ほろりと言葉を洩らした。
少年の周りには、見渡す限りの木、木、木。
今まで歩いてきた方を見ても草が生い茂っているだけで、いったい
どのようにしてココまで自分が歩いてきたのかが不思議なくらい
草木は乱れてはいなかった。

「嘘・・・どうしましょう・・・彼の出産に間に合いませんよっ!!?」

此の世の終り、といった表情を作り一人悶える様ははっきり言って異様だ。

「ああああ!彼からの初めての頼みだったのに、二つ返事でしたのに・・・
いえ、寧ろ是が非でもワタクシにって、啖呵きったのに!!!」

ひたすら、自己険呑に陥っている少年はピタリと止まったのでした。

「こ・・・・・・殺される!!!」

がたがたと震えだす体を、これでもかと言わんばかりに、抱え込もうとしている。
少年が恐れる人物に、自分が殺されるところ想像したのか、ひたすらに
「や、やめてください!腕、きりおとさないでぇ・・・あぁ・・拷問なんていたいですよぉぉぉ。」
とブツブツ、暗い影を背負いながら打ちひしがれているのでした。
その異様な行動に森の木々が反応を示した・・・・わけではないが木々が揺れた。

「だ「誰かいるんですか?」

少年の言葉と重なったのは、皺枯れた声だった。

「「え・・・っと。」」

互いの声が重なり合う。なんともタイミングのよい事だ。暫らく、辺りを沈黙が支配した。

「あ、あの!旅の方ですか!?」

話を切り出したのは、皺枯れた声の方だった。
言葉と同時に、生い茂る草を分けながら少年の下へ近付いてくる。
すると、どうだろう。声の主は、少年と同じくらいの外見の持ち主だった。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

「・・・・・だ・・・・(あの・・胸のふくらみは)・・女性ですか?・・・・」

少年は少し、いやかなり戸惑いながら聞いた。少年は咄嗟に相手の姿を確認したのだ。

「えっと・・・はい。私は麓の村に住む、セーバという者です。」

声は皺枯れ、格好も男のようで、現に少年よりも背が高い。
ただ、顔が幼くまだまだ子供のような雰囲気を纏っているし黒い髪にも艶があったのだ。
少年が首をかしげていると、セーバがまた、近付いてきた。

「えーと・・・旅の方ですか?」

もう一度、尋ねてくるセーバに少年は、はたと気付き
慌てて目深く被っていたフードを取り去った。
淡い金色の髪と日に焼ける事がなかったのか滑らかな白い肌がフードの下から現れた。

「これは失礼、初めまして。ワタクシは、レオトラードという者です。」

少し長い前髪の間から、コレもまた淡い色合いを放つ静かなアイスブルーの眸が覗く。
ぺこりとお辞儀をして、セーバに向き直った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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