あれ以来奏多と話していない。 奏多なりに気を使ってくれているのだろう。 あたしにはそれがとても嬉しかった。 そんなこと思ってはいけないってのは分かっている。 だが、奏多のことを考えてるのにいつの間にか保のことを考えていた。 そんな自分が嫌になってくる・・・。
『良呼んで』 保が帰ってきたのだから良も帰ってきているはず。 良は保の双子の弟。 昔から良き相談相手だった。 あたしが良を呼びにC組に行くと教室がざわついた。 早く呼べ!!!そう叫びそうになったが、後ろから肩を掴まれた。 振返ると男が立っていた。 顔は保つだったが髪の色は金髪、子供のような笑顔・・・良だった。
あたしと良は屋上に行った。 『うおー!!ここって屋上入れるんだ』 子供のようにはしゃいで飛び回っている。 保と大違いだ・ 『本当は入れないよ、だけど鍵貰ってよくさぼってるの』 『そうなんだ、んで話って?』 良の笑顔は本当に昔から変わっていない。 『良の中ではあたしってどういう子だった?』 良は一瞬戸惑ったがさっきのように笑ってくれた。 『そうだなー、すんげー優しくて頼りがいがあってばかみたいに素直で、俺の一番の友だち』 『そんな風に見られてたんだ・・・でも今はね、学校全体から嫌われてるの。 先公からもクラスの奴らからも・・・2、3年からも目つけられてて・・・。 今は彼氏も裏切りそうになってる・・・最悪だよね、昔のあたしに戻りたいよ』 良はあたしの頭を叩いた。 あたしが良の顔を見ると一瞬むっした顔をしたがすぐに笑顔になった。 『さくらはなーんにも変わってないよ、今だって素直に自分の気持ちを言ってくれたし、噂とか聞いたけどほとんど嘘って分かったし俺がさっき叩いたのだって悪い奴だったらすぐに反撃しかえす。でもさくらはしなかった。昔と変わってない・・・あっ1つだけ変わってた、ちょーっと今は頼りないかな?』
良の笑顔で涙が出てきた。 何年ぶりの涙かな? 今まで溜め込んできた心の気持ちを全て吐き出した。 そんなことで楽になるなんて・・・・。
とても悲しい夏のあの日。 あたしの閉ざされた心を開いてくれたのは良の変わらない笑顔だった。
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