俺たち3人は、店の裏口から中へ進んで行った。扉には、「関係者以外立ち入り禁止」と、書かれていた。通路を暫く進むと、小柄な男が、やって来た。 「おい、あんた等、此処に許可なく入ってくるな」 この店のオーナーのようだ。 「こちらにいらっしゃる、村月玲子さんにお話を伺う約束をしておりまして」 夏目が、着ていた上着の内ポケットから手帳を取り出し、目の前の小柄な男に差し出した。 「警察・・・?じゃあ、マリアが言っていたのはあんたらのことか」 「マリアさんですか?村月玲子さんとの約束ですが・・・」 黒澤が、小柄な男に確かめた。 「ああ、そうか訊いていないのか。玲子は、ここじゃあマリアって呼ばれているよ。本名じゃあ呼んでいない」 「そうですか。では、マリアさんはどちらに」 夏目が訊いた。 「ああ、今出番だ。そろそろ終わる頃だ。控え室で待っていてくれ。奥の部屋が、其処だ」 「分かりました。行きましょう。どうも」 俺たちは、小柄な男に礼を言い、控え室へ向かった。 扉には、「控え室」の文字が確認出来る。夏目が、ノックし、中へ進み入った。俺と、黒澤もその後に続いた。中には、出番を待っていると思われるダンサーが着替えをしたり、煙草を吸ったりと、リラックスした雰囲気が伝わる。上半身裸の女も居り、その乳房は、隠すこともしていない。 「マリアさんは、今出番ですか」 黒澤が、訊いた。 「ええ、もう直ぐ戻るけど、あんた達誰?マリアの知り合い?」 「新宿中央署の夏目です。ニューオリエンタルホテルの事件ご存知ですよね。そのことで、お話伺うことになっていまして」 相変わらずの丁寧な口調で夏目が説明した。 「ああ、そうなの。じゃあ、適当にその辺に座っていて」 サリーと名乗ったその女は、煙草を銜えて火を探していた。俺は、彼女の隣へ寄り、マッチで火を点け差し出した。 「ありがとう」 サリーは、それだけ言い、煙を噴出した。俺も煙草を取り出すと、今度は、サリーが、マッチで火を点けてくれた。 扉が開いたと同時に声が聞こえた。 「お疲れ様」 振り返ると、殆ど全裸と言っても過言ではない格好の女が入ってきた。 「村月玲子・・・マリアさんですか?」 わざわざ、言い換え夏目が訊いた。 「そうです。警察の方ですか」 「はい、お話を伺う約束でしたよね」 「そうだったわね。着替えるから外で待っていてくれる。『カルメン』っていう喫茶店があるから其処で」 村月玲子という、この女は、あまりにも美人という言葉に当て嵌まっていた。髪は、長くその艶さえ彼女の美しさを引き立てているようだ。目筋、鼻筋も確りしている。胸のその大きさも、一層際立って見える。 「そうですか。分かりました。では、後ほど」 夏目が言い俺と黒澤を引き連れるようにその部屋を出た。
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