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堕天使の街 作者:yasu

第25回   25
 外の風は少し肌寒く感じた。俺は、皮ジャンパーを着込み出発の準備をした。階段を下りると弦太は、愛用の白いボディのバイクのエンジンをかけ、準備を整えていた。
 俺は、弦太のバイクで指定された東京臨海埠頭へ向かった。走り始めると、風を切るせいか寒さが強く感じた。スピードが上がるに従い、それは益々大きくなっていった。
 俺たちは、臨海埠頭から200メートル程離れた場所にバイクを止め、其処から慎重に近づいていくことにした。腰に差した拳銃の感触を確かめた。
 埠頭の入り口には、「関係者以外立ち入り禁止」の看板があったが、構うことはない、と思いフェンスを乗り越え中へ入った。慎重に慎重を重ね、俺と弦太は少しずつ指定の七番倉庫を目指した。
 俺たちは一つ一つ確かめながら進んだ。どの倉庫からも明かりが漏れ見える様子はなかった。明るければ、倉庫の正面に何番倉庫か確かめられるように数字が記されているのだろうが、暗いと数えながら進むしかなかった。
「一番、二番、三番・・・・・六番」
 目的の七番倉庫が見えた瞬間、俺は途轍もなく大きな緊張に襲われた。
「此処だ」
 俺は、弦太の方を振り向いた。弦太が頷いているのが判った。
 倉庫の正面は、大きな扉になっている。近づいた時、俺の背後に気配を感じた。弦太は横に立っており、彼も俺と同じく何か感じたようだ。俺たち二人は、同時に振り返った。
「また、会ったな」
 声で誰か気付いた。尾行していた男だ。拳銃を向け、言った。

 俺と弦太は、男に指示されるまま、倉庫の中へ進んだ。暗闇が広がっている。正直、この男が絡んでいるとは、予想外だった。
「黙って進め」
 男が後ろから、拳銃を突きつけた。俺たちが持っている拳銃には気付いていない。反撃も出来ると思ったが、人質の命が危険にさらされると思い、従うことにした。弦太の思いも同じだったようだ。暫く進むと、倉庫内に明かりが灯った。男に立って待っていろ、と指示された場所にいると、思わぬ人物が顔を見せた。武本将成・・・そして、もう一人は札幌で会ったあの刑事、永峰。
「お前が黒幕、親父を殺したのも」
 俺は、永峰に訊いた。
「どういうことだ」
 弦太は、事情が飲み込めないようで、俺に質問した。
「お前の親父だと」
 永峰が逆に質問してきた。
「あれを見ろ」
 武本が指差した方には、梓と玲子がいた。その横には、尾行の男の片割れの大柄なあの男が拳銃を構えていた。
「彼女たちには関係ないことだろう」
 俺は、武本の方を見据えたが、武本は、何も言おうとはしなかった。
 一瞬のことだった。弦太が飛び出した。まず、茶髪の男を倒し、動きを封じた。隙を突いて男の拳銃を奪うことにも成功した。続いて武本の方へ突進し、薙ぎ倒した。武本がバランスを崩した。永峰が拳銃を構えようとした。俺は、ホルスターから40Fを抜き、永峰に標準を合わせようとしたがなかなか定まらなかった。足で蹴り、茶髪の男の拳銃が床を滑り、俺たちから遠くに位置した。起き上がった武本が弦太の背中を近くに転がっていた角材で思いっきり殴りつけたために、弦太は崩れ落ちた。
 永峰が、梓たちの方へ向かい走り出し俺は咄嗟にその足を狙い拳銃を発射させた。静寂を切り裂くような大きな音が倉庫内に響き渡り、弾が永峰の足を掠り動きが止まった。

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Novel Editor