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堕天使の街 作者:yasu

第10回   10
 北海道で随一の歓楽街である、札幌・すすきの。新興勢力の暴力団「加瀬組」の構成員・柴田朋宏が遺体で発見された。額を拳銃で撃ち抜かれ即死だったという。新宿でもそうだがこういった暴力に塗れた街ではそれ程珍しくなく、普段ならば気にも留めないような事件だったが今回ばかりは少し事情が違った。警察の発表によると柴田は新型の麻薬・通称「ヘヴン」を所持していたと言う。
加瀬組はこの麻薬取引で急激に勢力を増しており、そのバックには香港暗黒街の大物も付いていると噂されている。その加瀬組の構成員の柴田が何故殺されたのか。加瀬組の進出を快く思わない他の組織の犯行か、とも思われたがまさか以外なところで三つの殺人が繋がるとは、思いも寄らなかった。札幌中央署では、殺人課と暴力団対策課で合同の捜査本部が置かれたらしい。

「大変なことが判明しました。すすきので起きた暴力団員殺人事件ご存知ですよね」
 突然の夏目からの電話だった。
「ええ、新聞にも書いてありましたし、ニュースでも見ましたから」
 俺は、いかにも冷静を装って答えた。
「その事件の現場で発見された指紋が川上篤志の部屋で発見された第三の指紋と一致しました」
 夏目が言った。俺は、その言葉が何を意味するのか一瞬で悟った。
「親父が殺されたことと、川上が殺されたこと、そしてすすきのの事件に繋がりがあるのですね」
「そうです。まだ、柴田と二人との接点は見えていないのですが」
  俺は夏目に、連絡をくれたことを礼を言い、受話器を置いた。

 15年間に何があったのかを知るためには、彼女から話を聞く必要がある、と確信した。俺は、横浜にある俺が育った孤児院の「太陽学園」の園長、小峰さおりを訪ねることにした。

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Novel Editor