そう、僕が好きなのはずっと君だけ。 何度泣いても、嘆いても。 たとえ嘘でも、真実でも。
新宿、歌舞伎町。
雑踏は夜になっても落ち着きを見せず、僕は人ごみに流されていた。 目的も、帰る場所も、行くあてもなく。
君と手を繋いで歩いたあの日を思い出した。
あの夜は日曜日と月曜日の間で、少しだけ道行く人が少なくて。 けれど僕は初めて夜の歌舞伎町を歩いたから、それでも多くの人に驚いて。
君はそれを見て少し笑ったよね。
寒空の下で、客引きしている人に声を掛けられて、 困った笑顔でそれを断って。
みんな一生懸命なんだろうな、とか背後にあるものを思い描いてみたけど 僕の薄っぺらな人生じゃ、そんなもの推し量れるはずもなく。
他人に声を掛けられることが怖くて、 どこか知らない場所に行く勇気も、自分を変える努力もない。
厳しい現実に脚が竦んでるだけの僕の手を君が握った。
こうすれば、声を掛けられなくても済むよね?って。 華奢な指が僕の手に絡んで、迷う僕の手を引き寄せた。 少し低めの体温は、それでも僕の手より暖かくて。
とてもとても冷たい僕の手に、君は驚いて、 「俺の手より冷たい人なんて初めてだ」って。
あぁ、僕より暖かい手を君は取ったんだろうね。 そしてこれから先もその手を握って生きていくんだろうね。
そう思ったら死にたくなった。
この都会を歩いている人全てが、僕の知らない他人だから、 きっと僕が死んだところで誰も何も変わらないんだろう。
もしかしたら、君が泣いてくれるんじゃないか。
繋がった手の自分とは違う体温に、一瞬だけ夢を見た。 何度もなんども反芻した夢。
けれど、歌舞伎町を離れると同時に君の手は僕から離れて 僕の抱いた淡い期待は、人ごみに流されて踏みにじられた。
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