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妄想哀歌 作者:朱雀六

第1回   雑踏
そう、僕が好きなのはずっと君だけ。
何度泣いても、嘆いても。
たとえ嘘でも、真実でも。


新宿、歌舞伎町。

雑踏は夜になっても落ち着きを見せず、僕は人ごみに流されていた。
目的も、帰る場所も、行くあてもなく。


君と手を繋いで歩いたあの日を思い出した。

あの夜は日曜日と月曜日の間で、少しだけ道行く人が少なくて。
けれど僕は初めて夜の歌舞伎町を歩いたから、それでも多くの人に驚いて。

君はそれを見て少し笑ったよね。

寒空の下で、客引きしている人に声を掛けられて、
困った笑顔でそれを断って。

みんな一生懸命なんだろうな、とか背後にあるものを思い描いてみたけど
僕の薄っぺらな人生じゃ、そんなもの推し量れるはずもなく。

他人に声を掛けられることが怖くて、
どこか知らない場所に行く勇気も、自分を変える努力もない。

厳しい現実に脚が竦んでるだけの僕の手を君が握った。

こうすれば、声を掛けられなくても済むよね?って。
華奢な指が僕の手に絡んで、迷う僕の手を引き寄せた。
少し低めの体温は、それでも僕の手より暖かくて。

とてもとても冷たい僕の手に、君は驚いて、
「俺の手より冷たい人なんて初めてだ」って。

あぁ、僕より暖かい手を君は取ったんだろうね。
そしてこれから先もその手を握って生きていくんだろうね。

そう思ったら死にたくなった。

この都会を歩いている人全てが、僕の知らない他人だから、
きっと僕が死んだところで誰も何も変わらないんだろう。

もしかしたら、君が泣いてくれるんじゃないか。

繋がった手の自分とは違う体温に、一瞬だけ夢を見た。
何度もなんども反芻した夢。



けれど、歌舞伎町を離れると同時に君の手は僕から離れて
僕の抱いた淡い期待は、人ごみに流されて踏みにじられた。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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