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Pure−jam 作者:砂さらら

第10回   10
僕は久しぶりに渋谷の街に来た。彼女に手紙を書いた事で少しすっきりしたからか、前に彼女とデートした道筋を追って、思い出をトーレスしてみたくなったのだ。
ハチ公口を出ると相変わらずの人の多さだ。交番裏で2人組の男の子がフォークゲリラのような事をやっていた。
交差点をわたって109へ、良くここでウインドウショッピングをした。
文化村通りを横切りセンター街へ入る。人込みに思はず怯んでしまうのはいつまでたっても直らない癖だ。
どこかの喫茶店でお茶をしたり、ゲームセンターでUFOキャッチャーをした。
僕はへたくそで、ぬいぐるみを取るのはいつも彼女だった。
坂を上って東急ハンズに入る。一通り冷やかしてからハンズを出てパルコの前を通り公園通りに出る。
それを横切り、また坂を下って宮下公園へ行く。公園を駅の方へ抜けて東急デパートに着く。そしてプラネタリウムに行ったものだった。
いつも彼女が先に歩いて、後からアヒルみたいについていくばかりの僕にしては、今日は良く一人で歩けたものだ。
こうして歩いてみると、僕にとって彼女の存在が どれほど大きかったか解る。
一人で居ると、この街は 僕には巨大な怪獣の腹の中を歩いているみたいだった。
日曜日だから人出はかなり多いのだが、僕の胸には寂寥感がよぎる。
なんだか思い出を確かめるより、寂しさを確認しに来たみたいになってしまった。
慣れない事をするもんじゃないなと思う。
僕は逃げ出すようにして駅に駆け込んだ。山手線の緑色を見てやっと心が落ち着いた。
後は家路を辿ればいいだけだ。

10月に入って思いがけず彼女からの返事が来た。住所は書いていなかった。
僕は封を切った。

手紙をありがとう。私のことを覚えてくれていて嬉しいと思います。あなたと別れたのは全て私の問題です。私だけの問題で、私の我侭だったのです。
あなたが謝る必要なんてどこにも無いのに。
心配してくれてありがとう。
精神以外は元気です。もう私のことは気にしないで下さい。
私はあなたには必要の無い人間です。
私はあなたにもう会う事は出来ません。
早く新しい恋を見つけて幸せになってください。さようなら。お元気で。

それだけの手紙だった。
封筒には差出人の名前さえ書いていなかった。消印は彼女の居た街のものではなかった。
彼女はもう、僕を必要としていなかった。さようなら。はっきりとそう書いてあった。もう僕は過去の人間なのだと思い知らされた。寂しかった。悲しかった。でも仕方が無かった。これが彼女の出した答えであり、そして まぎれもなく僕の現実だった。僕たちの恋は完全に、そして完膚なきまでに終わったのだ。

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Novel Editor