最近、ポポの評判がいいらしい。献身的でよく出来た娘だってさ。まったく、誰が娘だ? まぁ、それでもアシスタントくらいは務まるようになってきたし、稼ぎにあぶれることもなくったのはポポのお陰だけどね。 「もぉ、賢者しゃまったら、ろこ行ったのかしら。まったく困ったものれちゅねぇ…。あ〜、いたいたぁ。お仕事れしゅよっ」 「なんだ、ポポか。もう見つかっちまったのか。少しは休ませてくれないかな」 ポポがマネージメントを始めてから良く言えば仕事に切れ目がないのだが悪く言えば休みってもんがない。 「なぁ、偶には休みにしないか?」 「駄目れしゅよ。みなしゃんは賢者さまを頼ってるんらから」 賢者を名乗る者は多からず…世の中にモンスターがうじゃうじゃしていた時代ならいざ知らず、今の時代じゃ賢者なんて隙間産業みたいなもんで競争相手も少ないんだが、それだけに替えが利かないってのも現実だ。確かに今までが適当って言われれば、それまでなんだけどねぇ。 「しょうがないな。どうせ請けちまったんだろう? 今回の依頼は何だ?」 「今回は、あたしのだ〜い嫌いなスライムれす」 そう、ポポはスライムが苦手なんだそうだ。あのプヨプヨしてて、グニュグニュしてて…考えただけでも鳥肌立つらしい。 「ポポも賢者の弟子になったんだから、スライムくらい怖がってどうする?」 「誰が弟子になったんれすかっ!? 勝手に人に弟子にしないれくらさい!」
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「妙な空気だな」 「そうれすか?」 依頼人の指定場所に着いたはいいが、似てはいるがスライムが生息するような場所じゃないな。 「どうやら御出迎えのようだ。スライムじゃない、あれはジェリィマンだ」 「 何れしゅか、それ? あたしの知らないモンスター?」 そうだろうな。グノーメんとこにどのくらい居たのかは知らないが、こいつらの生息場所なんて限られている。 「ゴブリンだのドラゴンだのと違って、話の通じる相手じゃないからな。ポポは下がってろっ」 依頼人も何でこんな所に来たんだかな。 「天と地の狭間に於いて納まるべき器を持たぬ者よ、形を成さずに蠢く者よ。汝の魂は凍てつく塊とならん!」 「ほぇ? 凍結呪文れしゅか?」 ちゃんと説明した方がいいんだろうな…。 「いいか、ポポ。我々の仕事は、モンスターを葬ることじゃない。人にも、モンスターにも安らぎを与えることだ」 「珍しく、まともな事言ってましゅねぇ」 やっぱり、まだ難しいか。呪文にある『天と地の狭間』に居るのは、人間だけじゃないってことなんだがな。
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「おやおや、もう片付いたのでございますか? 」 「はい。賢者さまですから」 あぁ〜あ、疑ってる目だ。ポポと会う以前と違って裏工作せずに、ちゃんと仕事してるんだがな。 「い、いやぁ、こ、こんなに早いとは思っていなかったから…礼金が用意出来てないんだよ」 なんだって…。踏み倒す気じゃないだろうな…。 「あのぉ…村長しゃん…」 ん? ポポのやつ、何する気だ? (あの賢者しゃま、気が短いんれす。早くしないと、今度はこの村まれ…) 「あ、い、いや、れ、礼金の用意は…いや御用意は、で、出来ておりますとも。すぐにお持ちします」 ポポ…お前、村長に何を言ったんだ? 「いいれすか、賢者しゃま。あたしたちの生活が掛ってるんれすからね。ボランチアじゃないんれすよ。頂くものはちゃぁ〜んと頂かないと」 「…一体、誰に似たんだ?」 「もちろん、け・ん・じゃ・さ・ま!」 はぁ…口の減らないとこなんかは俺より師匠に近いよなぁ。 「そうか、師匠に相談してみるか!」 何で気づかなかったんだ。師匠ならポポの親を探し出すのにいい方法があるかもしれない。 「ポポ、出発するぞ」 「ろこ行くんれしゅか?」 「俺の師匠んとこだ」 「賢者しゃまの師匠・・・手が掛かりそうれしゅねぇ…」 うっ…間違いじゃないとこが痛いな。
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