賢い者と書いて賢者だが、上には上ってものが居るらしい。まぁ相手が師匠じゃねぇ。
ゴーレムに案内されたのは意外性もなくグノーメの所だった。 「久しぶりだな」 「賢者殿も御壮健そうで何より」 見た目は壮健かもしれないが、精神的には結構ボロボロなんだがな。まぁ、そんなことをグノーメに愚痴ったところで仕方ない。 「実はポポ・・・いや、預かった女の子のことで色々と聞きたいことがあってね」 「ほう、どうやら約束通り、あの子の面倒を見ているようだな」 当たり前だ。これでも一応は賢者だ。精霊との約束を違える訳にはいかない。 「で、あの子を何処から預かったかということか?」 ちっ・・・師匠だな、ここまで先回りしてるんなら、ついでに聞き出しておいてくれればいいものを。 「あの子を預かった村は・・・もうない」 「無い?」 妙だな・・・。ここ何年も村が滅んだなんて話は聞いたことがない。噂話にも聞こえてこないくらいだ。俺が知ってる滅んだ最後の村は・・・俺の生まれた村だ。 「あの子の本当の名前って知ってるのか?」 「さぁなぁ。我々も預かったあの子を連れて逃げるのが精一杯だった」 もし、もし俺の生まれた村だとすれば無理はない話なんだ。奴に襲われたんだから。だが、あの村にあんな術を施せる術者は居た覚えがない。俺が忘れているだけなのか。それとも違う村なのか。どっちにしても村が存在しないなら手掛かりはないってことか。それに連れて逃げたってことは両親のことも聞いても判らないだろうしな。 「それじゃ仕方ないな」 「もう、賢者ってのは どうして気が短いの?」 先輩は一体、誰と比べてるんだか。 「時間を遡るような術は禁忌かもしれないけど、記憶を遡るくらいなら退行催眠みたいなもんでしょ」 簡単に言ってくれるなぁ。ポポに術の重ね掛けなんてのは危なっかしいし、精霊に術掛けるなんてのも簡単にはいかないんだしな。それ以前に奴にポポが狙われてるって時点で油断も何もあったもんじゃない。 「あぁ、じれったい。グノーメ、村は無くても村のあった場所くらいは判るんだろ?」 そっか、その手があったか。 「ふぅむ、どうやら賢者より魔女の方が賢いのかな?」 グノーメめ、精霊でなきゃ締めてやるところだ。そんなことはいい。とりあえず手掛かりの端くらいは見えてきたんだしな。ともかく俺たちはグノーメから村のあった場所を聞き出した。っていうか、師匠も中途半端な段取りしてくれてるよなぁ。昔っから、きっかけはくれても答えはくれない師匠だったから今更ぼやいても仕方ないんだけどねぇ。それより問題なのはグノーメの言っていた村の場所だ。 「ろうかしたんれちゅか?」 「ん、いや何でもない」 間違いなく俺の生まれた村だよな・・・
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