賢者なんかじゃ食っていけない。そう思う方がすっかり普通な時代になっちまったな。グノーメならこの辺に居てもよさそうなもんなんだがな。 「賢者しゃま、まられしゅかぁ?」 そんなこと言ったってポポを預かるのを条件に、あの炭鉱は立ち退いてもらっちまったからな。こっちもアタリをつけて探すしかないんだ。 「あらあら、そんなんじゃ何時まで掛かるか判ったもんじゃないわねぇ」 先輩に言われなくたって判ってる。相手が精霊の類でなけりゃ、こちだって賢者だ。ここまで苦労はしないさ。 「賢者しゃま、何か光ってましゅよ?」 何だ? って、マフェールから貰った道具じゃないか。精霊の道具が他の精霊に反応してるとかか? まさかグノーメ見つける道具だなんてオチはないだろうなぁ。 「…確かに気配はするけど…精霊なんて上等なもんじゃないな」 「おやおや、上等じゃないとはお言葉だな」 なんで、こんな所に奴が居る? 以前、先輩の屋敷の傍で会った時は暇が無いとか言ってたが今日こそは逃がすものか。しかし、何でマフェールの道具がこいつに反応したんだ? 偶然で反応したのは別のものか? 「先輩、ポポを頼みます」 「え、えぇ」 「相変わらず血の気の多いことですね。そこのお嬢さん…」 「え? 私?」 「いやいや、そこの可愛らしい方の・・・」 それ言ったら拙いだろ・・・ 「それって私が可愛くないみたいな言い方よね」 「どうも人間というのは思い上がりも甚だしい生き物ですね」 これで先輩を完全に敵にまわしたな。だが、こいつを倒すのは譲れない。 「まぁいいでしょう。いずれ、そのお嬢さんは頂きに来ます。それまで預けておきますよ」 「待てっ!」 ・・・消えちまいやがった。でも、何で奴がポポを狙うんだ? 「なんで奴が・・・」 「どうでもいいけどさ・・・これ、どうするの?」 え? マフェールの道具がまだ光ってる? てことは奴に反応した訳じゃないのか。 「賢者しゃま、あれあれ」 あれあれって、今更何が出て来たって驚きゃしないぞ。・・・って驚きゃしないけど・・・ 「ゴーレムじゃないか。何でこんな所に居るんだ?」 ゴーレムも一体しかいないと云う訳じゃないが、こいつは間違いなく洞窟に居た、あのゴーレムだ。 「あの時は世話になったな」 「そいつは、お互い様だ。こっちは先輩の魔女とポポ。大丈夫だ、このゴーレムは知り合いだから」 にしても、この間はドラゴンで今度はゴーレムか。世の中、狭いもんだな。 「ここで待ってた」 「待ってた? 俺を?」 首を横に振って・・・指差したのは・・・ 「ポポ?」 なんで奴もゴーレムも・・・まさかトロルの時のようなことでもないだろうに。 「頼まれた」 「誰に?」 ・・・って、それって・・・思わず先輩と顔を見合わせちまった。トロルの見せてくれたのは・・・ 「あ、師匠しゃんのとこにあったのと おんなじれしゅ!」 師匠に先回りされたのかよ・・・っていうか何でかなぁ・・・憂鬱が増すばかりだよ、まったく。
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