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Hideland Hill 作者:凪沙 一人

第5回   Exorcist
 Lord Of Soul Thirteen・・・通称LOSTに欠員が2名。特に補充をしようという動きはなかった。別に13人集まっていなければならないものでもなく、利害一致で組んでいるに過ぎない。それは互いの邪魔をしないこと、互いの邪魔を排除すること。
「魂でも人間でも古いのはダメだなぁ。人間一人止められないなんて」
「ソウル・メイカー、そうは言うが奴は、あの御子神亞門だ。そう簡単に行くハズもないだろうっ」
「ソウル・ブレイザー、名前の通り熱いねぇ君は。手強いのは彼じゃない、彼の使役する悪魔だろ?それを封じてしまえば、ただの人間に過ぎないと思うんだけどね」
 ソウル・メイカーは軽く言うが、それが難しいということをソウル・イレイザー、ソウル・イーターの二人は知っている。二人はゾンビ、ヴァンパイアと手下を失っているのだから。
「元プリーストだからソウル・クレイドルも、そんなこと判っていると思ったんだけどね」
 ソウル・メイカーは周囲を見回した。LOSTの中で悪魔を封じるのに元プリーストのクレイドル以外でとなると限られてもいた。そして中の一人と目を合わせた。
「行ってもらえるかな? ソウル・バスター」
「奴の悪魔を封じるというのであれば、そうなるか。いいだろう」
 ソウル・バスターはその場を後にした。


 亞門たちの元に届いた一通の招待状。それには堂々とLOSTと記されていた。それがフェイクではないことはすぐに判る。後は招待を受けるかどうか、それは亞門の判断次第である。そして亞門はその招待を受けることにした。
「大丈夫か? 奴は・・・」
「どうやら、俺を甘く見てるようだからな」
 カイムの心配など無用らしい。亞門は苦笑して出掛けていった。
「あの・・・」
「お嬢ちゃん、今回は足手纏いになるだけだ。ここでジッとしてな」
「皆さんは?」
「今回は俺たちは役に立てなさそうなんでね。もっと・・・」
 そう言ってカイムは指で上を指した。その意味がセラフには判らなかったのだが。


 亞門が招待された場所、そこは大聖堂。扉を開ければそこには整然と並んだ椅子と正面には巨大な像が立っていた。
「ようこそ、大聖堂へ。死するには最適ではないかな?」
「別に命まで取る気はない。その能力を削ぐだけで充分だろう?」
 亞門の瞳が冷たく威圧的に光っていた。負ける気など毛頭ないのがハッキリ判る。
「フッ、状況把握が出来ていないようだな」
 突然、扉が閉まった。しかし亞門は扉を振り返ることもなく驚くこともなく動揺した様子もない。
「ここは結界だ。悪魔の入り込む余地などない。ここでは貴様はただの人間に過ぎないっ。貴様に勝ち目などないのだっ」
 力説するソウル・バスターを亞門は涼しい目で見ていた。
「勘違いをしてないか? アブラメリンの神聖魔術とソロモン王の秘宝、それは悪魔との契約のみで成り立つものではない。その全豹をここで語るほど暇ではないが断片くらいは見せてやろう。・・・悪しき者の群集、我を囲みて我が手と足を刺し我が骨を砕く・・・」
 それは悪魔ではなく、愛、奉仕、平和、そして信仰を司る神々と十字架を使ったソロモン王の鍵、木星の第六魔法円に書かれた言葉であった。そして、ソウル・バスターの顔に焦りが見えた。
「どうやら意味が判ったようだな? さすがはエクソシストの端くれだ。ソロモン王の鍵は悪魔の名の書かれたものもあるが神々の名の書かれたもの、天使の名の書かれたものもある。だが、そんなことをするまでもないんだがな」
「何っ?!」
 ソウル・バスターの疑問に答えるように亞門とは別の影が現れた。
「貴様・・・悪魔っ?! バカな、この結界の中に・・・」
「偶に喚ばれたと思えば、こんな小者が相手か?」
「すまなな、アスタロト。欧州の盟主を喚ぶには確かに小者だが・・・まぁ許せ」
 アスタロト、その名にソウル・バスターは驚愕した。
「判ったか? 貴様の力では俺の力を抑えることは出来ないし、貴様の能力では、このクラスの悪魔には歯が立たないんだよ」
 圧倒的な力の差。それは否めなかった。
「くっ・・・アスタロトだと・・・貴様だけならば・・・」
 その言葉を聞いて亞門は鼻で笑った。
「フッ、己を知らないというのは愚かだな」
 ソウル・バスターは教壇の中から魔術符の描かれた白銀のバズーカを取り出した。
「諸共消えてなくなるがいいっ!」
 アスタロトが亞門に視線を向けると亞門は余裕の笑みを浮かべていた。アスタロトも軽く頷いて何もしなかった。ソウル・バスターが引き金を引くより早く亞門は白銀の剣を持って、その脇を駆け抜けた。と同時にバズーカは脆くも切り裂かれていた。
「な・・・何が・・・」
「終わりだな」
 亞門が再び白銀の剣を振るうと大聖堂にソウル・バスターの描いた魔法陣、結界は消えていった。
「貴様の能力は断ち切った。これで貴様の方が『只の人間』だ」
 ソウル・バスターはその場に崩れ落ちた。そして取り付かれたようにいくつかの呪文を唱えてはみるが何も起きることはない。
「亞門、喚んでおいて何もなしか?」
「力の差を理解させるには、その方が早いと思ったんでね」
「まぁいい。契約している以上、文句は言うまい」
 そう言い残してアスタロトは姿を消した。

「あも〜んっ!」
 大声で叫びながらセラフが走ってきた。その姿に亞門は苦笑いを浮かべていた。
「そろそろ終わる頃だと思ってな」
 後から来たカイムがそう答えた。
「そろそろ、奴等も本気になる頃かもしれないな」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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