「どうやらグランドがやられたらしい・・・」 「ならば神威が戻る前にこいつ等を倒さねばな」 スカルクロイツの化身たちは仲間が倒されたとあっても冷静さを失わない。 「いいだろう、手前ぇ等の相手はこのランディ=フィスティルトだっ」 「いいのか?」 星司の問いにランディは軽く頷くと先に行くよう促した。星司もそれに応えるように頷くと先へと向った。亞門の姿は・・・すでになかった。 「いいだろう。リヴァイアサン、ベヒーモス、そしてジズのキメラを倒したというのだから相手に不足はなさそうだ。このブリッツ=ハリケーンが相手だ」 対峙したブリッツの体格はグランドのように大きなものではなく、ランディと同じくらいだろう。力強く握りしめた拳だけが武器のランディは間合いを詰める必要があった。しかし、ブリッツの周囲には無数の小さな竜巻が起きていた。亞門や星司、龍斗ならば難なく突破出来そうだがランディはそうもいかない。 「さぁ、この風の中でどう戦う?」 「風であろうが何であろうが、この拳で貫くのみっ!」 その拳を竜巻の一つに打ち込んだ。 「ぐわっ」 無論、カマイタチのように風は鋭い刃となってランディの腕を傷つけた。しかし、驚いたのはブリッツの方だった。 「・・・かすり傷?」 「それがどうしたっ」 手加減をしているつもりはない。あのキメラを倒した相手なのだから最初から本気だ。その本気の竜巻に腕を突っ込んで、かすり傷しかつけられなかったことにブリッツは驚いていた。 「なるほど・・・ソウル・ブレイカー・・・未知数の男だな」 「未知数? 貴様等に未知数じゃない相手がこっちに居たかな?」 「フッ、そうだな」 オリジナルであるスカルクロイツと共有している部分の記憶を辿ってみても、誰一人その能力を把握しきれている相手はいなかった。それはLOSTに居たランディについても同じだった。しかし、それならそれで全力で当たるだけである。策を練るでもなくブリッツは大技で勝負してきた。 「デュアル・ハリケーンっ」 周囲のものよりも二周りは大きい竜巻が二つ、一つは逆に渦を巻いてランディの左右から迫ってきた。しかし、慌てることもなく軽いフットワークで間を縫うとブリッツへ迫る。すると、すり抜けたハズの竜巻が背後から迫る。まるで生き物のように。 「しつこいねぇ」 コークスクリューアッパー。ランディの放った拳もまた、風で渦を起こした。左右の拳でそれぞれの回転を起こしブリッツの竜巻を相殺した。 「人間の作る風が竜巻を消す・・・ありえない・・・貴様は・・・何者なのだ?」 「俺はランディ=フィスティルト。それ以上でも以下でもないっ」 気合の一撃をランディが打ち込もうとした瞬間、殺気を感じてスウェイバックした。 「さすが気づいたか。俺はブリッツ・・・その一撃は雷(イカズチ)なり」 「なるほど、雷ってのは風の眷属ってことか。だが、そんなもんで俺を貫くことは出来んっ」 どこから、その自信が来るのかはブリッツにも測りかねていた。ランディ自身も判っていないかもしれない。それでもランディは自信満々だった。 「人間ね・・・可能性・・・絶対性のない生き物だな。勝利も敗北も・・・不確実な存在・・・」 「勝手に決めてんじゃねぇよ。勝つのは俺だっ」 そう叫びながら叩き込んだ右の拳は的確にブリッツの頬を捉えていた。 「この程度ではあるまい? あのキメラを倒したような一撃を見せてみろ」 「いいだろう、最高の一撃を見舞ってやるぜ」 ランディが身構えるとブリッツも身構えた。 「デッド・ハリケーンっ」 ブリッツの漆黒の竜巻を放とうとした瞬間だった。ランディの放ったカウンターがデッド・ハリケーンを打ち返しブリッツはまともに自分の技を喰らってしまった。しかし、その反動は大きくランディへも返ってきた。 「ゲホッ・・・さすがに痛ぇな」 双方弾き飛ばされたが、体制の建て直しはブリッツの方が早かった。それでも次の一撃を放ったのはランディだった。崩れた態勢で放つ拳はデッド・ハリケーンを打ち返した程の威力はない。しかし、そのままランディは連打した。もはや尋常の速度ではなかった。電撃戦の名を持つブリッツでさえ反撃の間の無いほどに。これがスカルクロイツのクローンだけならば勝負は結していたかもしれない。だがブリッツはキメラでありホムンクルスでもある。そう簡単にはいかなかった。 「結構、粘ってくれるな」 「粘る? 貴様の方こそ、よくもつ」 素直な感想かもしれない。もっと早く・・・一瞬で片付けるつもりでいた。それが長引き、今、まだ目の前にランディは立っている。それは紛れも無い事実だ。 「さっきはカウンターだったな・・・次は自分の技を打って来いよ・・・あれがお前の最高じゃないハズだ・・・自分の言った言葉には責任を持て・・・。こっちも最期の一撃だろうからな・・・覚悟しろよ」 その言葉に嘘のないことはランディにも判った。 「いいぜ・・・今度こそ最高最強の一撃・・・アルティメット・スクリューッ」 それはランディの全闘気を纏ったコーク・スクリューだった。 「デッド・ハリケーンっ」 ブリッツの再び放った漆黒の竜巻を突き破り、ボディを捉え吹き飛ばした。 「・・・さすが・・・ソウル・・・ブレイカー・・・だな。お前なら・・・スカルクロイツを止められるかもしれないな・・・」 「バーカ。そんな体力残っちゃいねぇよ。ま、亞門や星司が居るから安心しやがれ・・・」 ブリッツはその言葉を聞き終える前に崩れていった。ランディもまた、気を失ってしまった。
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