「なんか僕を除け者にした割には大したこと無かったねぇ」 結局、ソウル・メイカーに横柄な態度を許すこととなった。元々一枚岩とは云えない集団、確執が生まれても不思議はなかった。 「アクレイスター=スカルクロイツ、何の為にLOSTに参加した?」 「計画が少しは楽になるかなって。実際、御子神亞門が動き出すまでは結構、上手くいってたと思うよ」 確かにスカルクロイツの思惑には沿っていたかもしれない。だが、それはLOSTの意志とは異なるものだ。 「我々は協力を強制せず互いの邪魔はせず目的遂行の為に組んだ。それは無駄な足の引っ張り合いを防ぐ為でもある。だが、貴様は我々を利用することのみを考えている」 「当たり前だろ? 利用価値がなければ邪魔なだけじゃないか」 何の躊躇いもなくスカルクロイツは言い切った。 「ソウル・ホールド、僕は言ったハズだよね。序列をハッキリさせて組織で当たるべきだと。それが出来なかったから彼に潰されそうだと思うんだけどな」 前回は退席させたがスカルクロイツの言うことも一理あることは認識していた。 「では貴様はどう組織を組もうというのだ?」 「ここまで数が減ったら組織にもならないでしょ。この数なら組織ではなく協力して当たるべきなんじゃない? 僕には必要ないけどさ」 「いいだろう。ならば、このブレイカーとシューター、セイバーの三人で奴を潰してこよう。その後の身の振りは考えておくんだな」 「はいはい、彼を倒してきてくれたら考えとくよ」 三人はこの場を後にした。それをスカルクロイツは薄笑いを浮かべて見送っていた。
「今度の所は、何が待っているんですか?」 セラフも慣れてきたのかカイムに質問をした。カイムは一応、視線を亞門へと投げかけてみるが止めもしないので答えることにした。 「次は森の中の村っていうより里だな。奴等もいよいよ後がないって感じだ」 「どうして、わざわざ待ち伏せている所に行くんですか?」 「根本的な質問だな。亞門は奴等を潰そうとしている。だから奴等の居るところに行く。当然だろ?」 「は・・・はぁ。じゃ、なんで潰そうとしているんですか?」 「最初はゾンビ退治の依頼でこの国に来たんだがな・・・」 それ以上はカイムも語らなかった。きっかけは小さな村に現われたゾンビ退治。その為に亞門はこの国にカイムを先行させ、そこでLord Of Soul Thirteenの存在も知った。それは亞門にとっては許せない存在でもあった。 「そろそろ里に着くぞ」 そう亞門は言ったのだが里など何処にも見えない。 「え? 何処ですか?」 「おや・・・御子神殿ではないですか?」 セラフが当たりを見回していると声がした。 「久しぶりだな。ここに誰か着ただろ?」 「えぇ、ですが追い払いました。気配はまだしますので近くに居るようですが・・・」 「そうか。すまないが少し騒がしくなる」 「あの・・・どなたとお話を・・・」 「おや、そちらのお嬢ちゃんは我等の姿が見えないのですね」 「え、あ、はい。お声は聞こえるんですけど・・・」 「ほうほう。声が聞こえるってことは少しは・・・」 「こいつの事はいい。それより里に下がっていてくれ」 「そうですな・・・」 声の主の気配は消えた。 「どうせなら、お前も匿ってもらうんだったな」 「えっ? あたしですか?」 「まぁいい。行くぞっ」 「は、はいっ」 亞門と一緒にセラフは走り出した。 「どこへ行くつもりだ?」 「フッ、残り二人はどこだ? ソウル・セイバーっ!」 「悪魔というのは便利なものだな。こちらの手の内が筒抜けとは」 セイバーに答える気はない。というより知っているハズだと言わんばかりだ。 「先にそっちの小娘から処分してくれるっ」 セラフに向って1本の矢が放たれた。が、それは途中で打ち落とされた。打ち落としたのは一匹の黒豹だった。 「さすがだな、シトリー」 「その為に喚んだんだろうが」 まるでレーザーのような光線を放つことが出来る。それがシトリーの得意でもあった。 「ならばっ」 別の影が拳を放つ。が、それを一振りの木刀が受け止めた。 「バカな・・・鋼さえ撃ち抜く俺の拳が・・・」 「また手出しさせてもらうよ」 「風切・・・?!」 「風の吹くまま気の向くまま。気紛れの行動までは読めなかったろ?」 「風切? ドラグナイトたちが封じられた時に居たというのは貴様かっ」 ブレイカーの拳と星司の木刀“銀河”の間で力は拮抗してた・・・かに見えた。 「貴様・・・なぜ手を抜いているっ 嘗めているのかっ」 「いや、三人の中で君だけは人間のようなんでね。倒さないよう抑えているだけさ」 「それが嘗めているというっ」 左右の拳の連打に足技も交えブレイカーは打ち込むが星司は事もなく受け流して行く。シトリーもシューターの雨のように降り注ぐ矢をいとも簡単に打ち落としていく。亞門も装魔刀と白銀の剣でセイバーの剣を受け切っていた。 「喩え何人纏まろうが俺の使役する悪魔の数に物量で敵う訳がなかろう。物量でも実力でも俺と敵対するなど無駄なことだ」 物量で敵わぬことはブレイカーたちも承知していた。アブラメリンの神聖魔術とソロモン王の秘宝。その使役する数は70余名だが、その使役される悪魔の中には数万の手下を持つ者もいる。とても数で敵う相手ではない。しかし、技量で劣るとは思ってはいなかった。 「もうLOSTなんぞ関係無い。俺たち三人の戦いだっ」 ブレイカーの意気込みは上がるが星司には、それでも通用しない。ふとシューターとセイバーはその手を止めた。 「どうした、諦めたのか?」 「そうだな・・・貴様には勝てん」 「何を言うんだ、セイバーっ」 セイバーは亞門に突然、あっさりと敗北を認めてしまった。そして、シューターもまたシトリーに敗北を認めていた。 「何故・・・」 ブレイカーも拳を止め、呆然としていた。 「でだ、ブレイカー・・・ランディ・フィスティルトの事を頼めないか?」 それは、あまりにも突然で意表を突くようではあるが、セイバーが本気なのは亞門にも伝わった。 「お前と剣を交えてみて判った。お前等なら、こいつを成長させられるってな」 「どういう意味だよっ!」 ランディはまだ混乱していた。 「俺たち三人はLOSTが出来る前から、ずっと一緒だった。こいつが俺たちに追いついてくるまでは良かったんだが・・・俺たちは、そっちの奴の言う通り人間じゃない。そして、これ以上成長することもない。だが、こいつは違う。まだまだ伸び代があるんだ。可能性がある。俺たちがLOSTに入ってからも非の無い相手に剣や矢、拳を向けていないのは承知しているんだろ?」 それには亞門も無言で頷いた。 「なら頼めないか?」 「お前たち二人はどうするんだ?」 「我々は・・・ランディの守護者だからな。そろそろお役御免だ。だから後を頼める者を探していたともいえる。それに我々では戦うことでしか教えてやれない」 「・・・判った」 「相変わらず甘いな・・・」 「星司、お前に任せる」 「って、引き受けておいて押し付けるのか?」 「群れるのは御免なんでな」 「そろそろ逝くとする。それじゃな、ランディ」 セイバーとシューターは姿を消して行った。突然過ぎる出来事。ランディはまだ混乱の最中だ。 「シトリー、手間を掛けたな」 「契約者に文句は言いたくないが・・・茶番だったな・・・」 それだけ言い残してシトリーも姿を消した。 「一体・・・何がどうなってんだよっ」 やっとランディが落ち着いてきたらしい。 「彼奴等はお前を任せられる相手を求めていただけだ。LOSTに入ったのも、そういう相手に巡り会う為・・・」 亞門はカイムから情報として知っていた。だからこそ、三人に力の差を見せても倒そうとはしなかったのだ。そしてシトリーはそれを茶番と呼んだ。 「裏を返せばスカルクロイツは、それだけの器じゃなかったんだろうな」 「俺が一緒に行くことが、あの二人の遺志だと言うのなら一緒に行ってやる。それで強くなるというのなら強くなってやる」 「それでいい」 「あの・・・新しいお仲間ですね?」 「え、ラ、ランディ=フィスティルトだ・・・」 「あたし、シスター・セラフィーヌ=フローレンです。よろしくお願いします」 「え、あ、あぁ・・・よろしく・・・」 どうやら、結局は匿ってもらっていたらしい。星司は挨拶の済んだランディを連れてどこかへ消えていった。 「なんか、結局何も出来ませんでした・・・」 「お前はそれでいい。下手に何かしようとしない方が楽だしな」 「あ、酷〜い」 残るLOSTは三人にまで減っていた。
|
|