李の帰った後、航は莉音と再び小フーガを奏で始めた。何度演奏しても息の合った演奏である。 (昨夜の進藤って子とのギターも結構、いい演奏してたよねぇ弦楽二重奏ってのもありなのかなぁ・・・) リトルの楽器はハーディ・ガーディ・・・をハンガリー語で言えば「回転リュート」だし、構造は弦をホイールに変えたヴァイオリンのようなもの、そのボディはリュート型もあるがギター型も多い。航、莉音、そして紀人や李の誰の楽器とも無縁ではなさそうでいて、どれとも違う。それにリトルは一人。航に聞かせて曲作りをさせるのに二重奏は難しいかもしれない。
「あ、今日は姉さんと帰るから、お先に〜」 部活の時間が終わると、莉音は外で待っていた奏と共に帰って行った。 『あらら、今日は寂しい帰宅だねぇ』 (誰が寂しいんだ?! 奏さんだって妹に変な噂が立つのは困るだろうしな) 『困る?』 (卒業後の進路に差し支えるってことさ) 『個人には関係ないんじゃないの?』 (個人には関係なくても、家族には関係あるんだよ) 『・・・そっか。家族って面倒なんだな』 (面倒なだけじゃないけどな・・・) 故あって一人で暮らしている航と悪魔のリトルにとっては複雑で微妙な問題だった。
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