「それならばこんな所に長居は無用。」
踵を返し戻ろうとするサラ。
「そうはいかねぇなぁ。」
またワラワラと出てくる野盗たち。 今度は問答無用で斬りかかってくる。
「少しは考えてるって事かしらね?」
リーファが言っているのは野盗の動きの事だ。 サラが馬からおりた所を狙い円形にサラを囲んでいる。 浄化の光を使わせないつもりだろう。
「肝心な事を忘れてるけどね。」
浄化の光を使おうが使うまいがサラが野盗ごときに遅れを取る訳がないのだ。 腰に携えていた小剣で闘い完全に野盗を圧倒している。
さらに。
「こっちがガラ空きだってーの!」
円陣に斬りかかっていくリーファ。
「くれぐれも後ろから斬るんじゃないぞ!」
アルが叫ぶ。 すでに‘正義の誓い’を立て終えているのだ。 太陽と正義の神アロンは不正を許さない。 後ろから斬りかかるなど以っての外だ。 万が一そんな事をしてしまったら…敵に対する5ポイントの追加ダメージを失うばかりか不正の罰として味方全員に10ポイントのダメージ、である。
「アタシ、一応中を調べてくるね。」
リノがスルリと戦線を抜けアジトに入っていく。 追っ手がかからない所をみると本当にここにはいないのだろう。 しかし念の為だ。
一刻とかからず。 戦闘は終息を迎えた。 野盗は見張りを残してみな倒れ込んでいる。
「小剣一本で…。なんて女だ…。」
「あのでっかい剣の姉ちゃんもすげぇ…。」
女性戦士二人に完敗の野盗たちである。
「さて。残るはあなただけですね。」
見張りに睨みをきかせるサラ。
「おめでたいやつらだな。今頃やっこさんらは馬車に揺られて移動中さ。早く行かないと間に合わないぜぇ?まぁ、行っても間に合わないかもなぁ。」
見張りの男はとても楽しそうだ。 してやったり、というささやかな優越感に浸っているのだろう。
「あ。外に出してくれたんだ?」
リノが少し間延びした声を上げる。 いつの間にか戻ってきていたようだ。
「それなら大丈夫ね。出してくれなくても見つけ出せただろうけどね。」
その表情には余裕すら感じさせる。
「何を言ってるんだ?」
小馬鹿にした様子の見張り。
「ダメよぉ?ギルドに断りなく遺跡を荒らしたりしたらぁ。あなたたち目を付けられてたわよ?」
「遺跡…?」
「古代遺跡のお宝は盗賊ギルドの管轄なのよ?冒険者だって冒険者ギルドを通して上納してるんだから。」
「だから…。何の話をしている?」
「あなた知らないの?このお城の下に古代遺跡が眠ってるって。」
「なんだと!?」
「そこに倒れてる中にもギルドの人がいたりして。ごめんなさいねぇ。」
「別に構わんさ…。」
倒れている野盗の誰かがそう呟いた。 監視目的で潜入していてとばっちりをくったらしい。
「今回の事話したらギルドのお偉方カンカンで。『これ以上の勝手は許さん。絶対見つけてやる。』、って。」
「な…!」
「こっちは陽動。聞いてもないのに名乗ってるし、罠だとは思ってたけどね〜。裏の裏とか…かかれちゃうとヤだしね。」
『終わった…。なにもかも…。』
その場にへたり込む見張り。 実は頭領であったりする。
「あのぉ…リノ…さん?」
恐る恐るサラが尋ねる。
「あぁ、ごめんごめん。‘敵を欺くには先ず味方から’ってね。ま、こんなの放っといて行きましょ。」
片目を閉じたリノの笑みは小悪魔のようであった。
「いいえ。少し待ってください。」
燃え尽きて灰になっている頭領にサラの詰問が飛ぶ。 真相を聞き出すのにそう時間はかからなかった。
真相を知ったサラとその他三人はエルストイの街に急いで戻る。 首謀者と対面する為に…。
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