「いくよ?お嬢ちゃん。」
刀身が真っ赤になったヒート・ブレードを振りかざすルーツ。 今度は先にリーファが斬りかかる。
「お嬢ちゃんお嬢ちゃんて…、言うなー!」
心なしか振るう剣に精彩を欠いている。
「なにやってんだ?リーファは…。」
カムリが呟く。 リーファの動きが急に鈍ったのを感じとったのだ。
ちょうどその頃、ショウは街外れにある古びた建物に辿り着いていた。
「ほぉ。こりゃ珍しい黒いフクロウが迷い混んできたのぉ。」
ニヤニヤと笑いながら老人が言う。
「老師!冗談を言ってる場合ではないのです!」
なんとか急を告げようと焦るカムリ。
老師は落ち着いたものだ。
「分かっとるわい。しょーもないもんつけられよって。今準備しとるから待っとれ。呪いを解くにはそれなりの準備がいるんじゃ…。」
中断していた作業に戻りながら老師が続ける。
「これっぽっちの石ころじゃ、割に合わんがの。」
少しばかり厭味を言った後、思い出したようにショウに向き直りこう告げた。
「お前さんは先に戻るんじゃ。扉を開いてやるでな。」
老師が魔法を唱えると空間に歪みが生じる。 ショウは迷う事無くそこに飛び込む…。
『押されてる…?なんで?なんでこんな奴に!』
リーファの思いは複雑だ。 かつては仲間だった。 一緒に旅をして苦楽を共にした。 それなのに…。
『斬りかかってくるなんて許せない!』
しかも本気で、である。 互いが持つ精霊剣は一撃必殺の剣だ。 精霊魔法を使う魔法戦士同士。 片手をあけなければならないから盾は持てない。 さらに精霊が嫌う金属製の鎧を身に着ける事も出来ない。 二人とも厚手の革で出来た鎧を身に着けている。 精霊剣の斬り付けに対してはあまりにも無防備だ。
『なぜ斬りかかってくるの?』
昔から、その軽さが嫌いだった。 調子のいい事ばかり言って。 誰にでもそうのクセに…。
『斬りかかってこないでよ…。』
こんな奴でもかつての仲間。 それに…。 迷いが剣筋を鈍らせる。 次第に防戦一方になっていくリーファ。
「攻めきれないっていうのか?いったい、どういう関係なんだ…?」
カムリには歯痒い思いが積み重なっていく。 自分は魔法が使えない。 次第に劣勢に立たされていくリーファを見守る事しか出来ない。 それに、何かが引っ掛かる…。
「リーファ!」
リーファの剣が大きくはじかれ体勢が揺らいだ。 よろけるリーファ。 斬りかかるルーツ。 二人の間を黒い影がよぎる!
リーファは押し倒され尻餅をつく。 リーファの目の前に力無く横たわるのは…。
「ショウ…?」
背中をざっくりと斬られぐったりしている。
「まさか…?カムリ!」
カムリの方を見やるリーファ。 そこにはローブの背中が大きく裂け、血を流して倒れているカムリの姿があった。
「カムリ!なんてこと…。」
リーファはとてつもない腹立たしさを覚えた。 斬ったルーツに対してなのか、それとも斬らせてしまった自分に対してなのか…。
「許せない…。」
その感情に呼応してリーファの剣に纏われた真空波が激しく渦を巻き始める。 それはあたかも嵐のように激しく吹き荒んでいく。
「許せない!」
リーファの一閃が唸りをあげる。 吹き飛ばされるルーツ。 あきらかに今までとは違うリーファがそこにいた…。
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