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ピースブレイカー 作者:satiss

第9回   ピースブレイカー9

「いくよ?お嬢ちゃん。」

刀身が真っ赤になったヒート・ブレードを振りかざすルーツ。
今度は先にリーファが斬りかかる。

「お嬢ちゃんお嬢ちゃんて…、言うなー!」

心なしか振るう剣に精彩を欠いている。

「なにやってんだ?リーファは…。」

カムリが呟く。
リーファの動きが急に鈍ったのを感じとったのだ。


ちょうどその頃、ショウは街外れにある古びた建物に辿り着いていた。

「ほぉ。こりゃ珍しい黒いフクロウが迷い混んできたのぉ。」

ニヤニヤと笑いながら老人が言う。

「老師!冗談を言ってる場合ではないのです!」

なんとか急を告げようと焦るカムリ。

老師は落ち着いたものだ。

「分かっとるわい。しょーもないもんつけられよって。今準備しとるから待っとれ。呪いを解くにはそれなりの準備がいるんじゃ…。」

中断していた作業に戻りながら老師が続ける。

「これっぽっちの石ころじゃ、割に合わんがの。」

少しばかり厭味を言った後、思い出したようにショウに向き直りこう告げた。

「お前さんは先に戻るんじゃ。扉を開いてやるでな。」

老師が魔法を唱えると空間に歪みが生じる。
ショウは迷う事無くそこに飛び込む…。


『押されてる…?なんで?なんでこんな奴に!』

リーファの思いは複雑だ。
かつては仲間だった。
一緒に旅をして苦楽を共にした。
それなのに…。

『斬りかかってくるなんて許せない!』

しかも本気で、である。
互いが持つ精霊剣は一撃必殺の剣だ。
精霊魔法を使う魔法戦士同士。
片手をあけなければならないから盾は持てない。
さらに精霊が嫌う金属製の鎧を身に着ける事も出来ない。
二人とも厚手の革で出来た鎧を身に着けている。
精霊剣の斬り付けに対してはあまりにも無防備だ。

『なぜ斬りかかってくるの?』

昔から、その軽さが嫌いだった。
調子のいい事ばかり言って。
誰にでもそうのクセに…。

『斬りかかってこないでよ…。』

こんな奴でもかつての仲間。
それに…。
迷いが剣筋を鈍らせる。
次第に防戦一方になっていくリーファ。

「攻めきれないっていうのか?いったい、どういう関係なんだ…?」

カムリには歯痒い思いが積み重なっていく。
自分は魔法が使えない。
次第に劣勢に立たされていくリーファを見守る事しか出来ない。
それに、何かが引っ掛かる…。

「リーファ!」

リーファの剣が大きくはじかれ体勢が揺らいだ。
よろけるリーファ。
斬りかかるルーツ。
二人の間を黒い影がよぎる!

リーファは押し倒され尻餅をつく。
リーファの目の前に力無く横たわるのは…。

「ショウ…?」

背中をざっくりと斬られぐったりしている。

「まさか…?カムリ!」

カムリの方を見やるリーファ。
そこにはローブの背中が大きく裂け、血を流して倒れているカムリの姿があった。

「カムリ!なんてこと…。」

リーファはとてつもない腹立たしさを覚えた。
斬ったルーツに対してなのか、それとも斬らせてしまった自分に対してなのか…。

「許せない…。」

その感情に呼応してリーファの剣に纏われた真空波が激しく渦を巻き始める。
それはあたかも嵐のように激しく吹き荒んでいく。

「許せない!」

リーファの一閃が唸りをあげる。
吹き飛ばされるルーツ。
あきらかに今までとは違うリーファがそこにいた…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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