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ピースブレイカー 作者:satiss

第17回   ピースブレイカー17

「なにやってんのよ?あんたは…。」

リーファが拳を握りしめながら呟く。
あまりにも力を入れ過ぎて手の平から血が滴り落ちている。
駆け寄りたい気持ちもあったが、堪えた。
今は敵味方だ。

「せめて弔いを…。」

リーファの意見に異を唱える者などいる筈がなかった。

墓標として剣を刺す。

「戦士の墓はこうでなくちゃな。」

ルーツは常々言っていた。

「こんなに早く叶うなんてね。」

リーファの呟きは、ただの率直な感想だ。
他意はない。

「さ…。行きましょ?」

振り向いたリーファに悲しむ様子はなかった。
いや、なくそうとしているのだ。

「そうだね。出会いがあれば別れもある。」

軽い口調のディプレス

「特に僕たち‘ピースブレイカー’は、ね。」

「僕…たち…?」

カムリがしゃがれた声で聞き返す。
やっと声が出るようになってきたようだ。

「詳しい話はあとあと。とにかく戻ろう。」

一行はその場を後にした。

街に戻り老師の館で互いに簡単な紹介を済ませる。

「やっぱりあなたが剣豪ディプレスなのね?」

肩の力をがっくりと落としているリーファ。

「そうだよ。」

ディプレスの方は特に気にする様子もない。

「さっき、あのお爺さんの事‘ジジ様’とかって呼んでたけど…?」

気を取り直した、といった風なリーファである。

「あぁ。捨て子だった僕を拾って育ててくれたのさ。」

「そうなの?」

思わずカムリの方を向いて確認してしまうリーファ。
カムリは『知らない』と言いたげに首を横に振る。
まだ喉の調子が良くない。

「十年前にはもうここにいなかったからね。帰ってきたのはつい最近だし。」

カムリとは行き違っているのだ。

「なるほど。そこまではいいわ。で…、‘僕たち’ってのは?」

まるで尋問である。
納得のいく答を聞きたいと真に願っているのだ。

「それはコイツに説明させるよ。」

ディプレスは剣を抜きテーブルの上に置く。

「では、説明しましょう。」

テーブルに置かれたディプレスの剣が喋り始める。

「喋る…剣…?」

カムリの声はまだ少しかすれている。

「二本もあったなんてね。」

リーファも黄金の剣亭には何度か世話になっている。

「二本じゃないがね。お前たち、いつまで黙ってるつもりだ?」

ディプレスの剣がそう問い掛ける。

「頃合いを見計らってたのよ。」

と、リーファの剣から声がする。

「そうそう。」

と、こちらはカムリの懐から。

「え?」

慌ててリーファが剣を抜く。
カムリも懐から短剣を取り出した。

「どうなってるの?」

リーファもカムリも何が起こったのかわからない。

「それは今から説明しよう。」

ディプレスの剣は滔々と聞かせてくれた。
掻い摘まんで言うとこうだ。

『遥か昔。人間と精霊が共に生きていた時代。一人の偉大な預言者が現れた。彼は、やがてこの世界に訪れる災厄とそれに立ち向かう六人の運命の子たちを預言した。災厄は大きいが六つの力を合わせれば‘世界のかけらを打ち砕く’ほどになるであろう、と。その強すぎる力の為に苦難の道を歩む彼らを護りなさい、と。精霊たちはその力を象徴する六つの剣を作り運命の子たちの誕生を待った。人間たちはそれを真似て六本の剣を作った。やがて人間たちはその事を忘れていったが精霊たちは待ち続けた。今、精霊たちは運命の子たちを見つけ出し彼らを護る為に共にある。』

と。

「だって、そんな…。」

初めて聞く話に混乱するリーファとカムリであった…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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