目が覚めると、かんかん照りの太陽と 不安そうな夏乃が俺を見ていた。
「大丈夫?うなされてたけど・・。」
安心する。
「あいつは、最期までばあちゃんを想って泣いてたよ。」 「・・・うん。」
「アメリカ兵が俺に銃口を向けて、何か言った。 そして辛そうな顔で・・・・」
「きっと、怖かったのね。」
「え・・・?」
「その人もきっと、愛しい人を失うのが怖かったのよ。 殺し合いなんて、ほんとは絶対したくないのに・・・。 神さまは 残酷ね。」
ああ なんて上天気
そういえば、あいつが出生したあの日も こんな天気だったな
父さん達が海へ行くと言った。 だけど俺は断った。
そして、ばあちゃんに話があると言うと ばあちゃんは黙って頷いて、夏乃も残りなさいと言った。
「何かしら?」
ジュースをふたつ、机に置いてばあちゃんが俺達を見た。
「あいつが死んで、それからばあちゃんはどうしたの?」
また遠くを見つめる。
そして口を開いた。
「武が死んで、ちょうど1年経った頃かしら。 戦争が終わってね、あたしは家族と一緒に本土の方へ移ったんだよ。
とうとう武の遺骨は戻ってこなかった。
それから何年かしてあたしは親に紹介された人と結婚したの。 それがおじいちゃん。 これから愛していこうと思った。
努力もした。
だけどだめだった。
結局、一度もおじいちゃんを愛することはできなかった。」
眠っていた真実をばあちゃん自信が語り始める。
涙腺が緩む。
「どれだけ考えないようにしても、あいつの顔だけが浮かぶ。
武を、忘れた事なんてなかった。 今まで生きてきて、片時も忘れた事なんてなかったわっ・・・・。」
ばあちゃんが泣いた。
夏乃がばあちゃんの肩を支えた。
「だけど、もう終わりにしなきゃ。 武は、いないものね。」
「いるよ。
俺の中にいる。ちゃんと生きてる。」
ばあちゃんが笑った。
「そうね。
じゃあ夏乃、あなたが愛すのよ。
あたしの代わりに、武を・・・」
愛しい人ほど 傷になる。
忘れる事なんて できない。
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