ふと我に戻ると泣いていた。 夢の中で あいつが泣いていたように・・・
「起きた?」 「うん。なんかおもしろいな。俺らいつも一緒に目、覚めるんだもんな。」 「武が・・・行っちゃった。」 「・・・・・・・。」
「そうかい・・。もう行ったかい。」
後ろを振り向くとばあちゃんがいた。
「あいつはねぇ、泣かなかったんだ。 あたしらの前では、絶対。
それを見てるこっちが泣きたくなってしまってねぇ。」
ばあちゃんはひとつひとつ思い出すようにゆっくりと話した。
「でも、泣いてたんかねぇ。
あたしのいないところで 泣いてたんかねぇ。」
「泣いてたよ。 武はばあちゃんと離れたくないって
そんだけで・・・・・。」
「ねぇ、おばあちゃん・・悲しいね。 好きな人がいなくなるって
辛いね。」
夏乃がばあちゃんに言った。
すると俺はまた意識が遠くなっていくのを感じた。
昭和19年7月
俺がこの部隊に入って、もう半年が過ぎようとしていた。
すっかりやせ細って、お腹も極限を保つ毎日が続いた。
俺はいつ 死んでしまうのだろうか
(美夏視点)
「ねえお母さん!」 「なあに?」 「戦争が終わるまで、兵隊は帰ってこんと?」 「そうねぇ。でも武は早う帰るて言うとったに。」
いつ、帰ってくるの・・・
お母さんに頼まれて、武の家に漬け物を分けにいった。
「まあ、ありがとう!いつも悪いわねぇ。」 「いやいいんです!こういう時こそ助けあわんと!」
少し立ち話をしていた。
悪魔が 忍び寄っていた。
コンコン
「電報です。」
「はいはい。何かしら・・・?」
「ご立派に、戦死されました!」
郵便屋さんは辛そうな顔をして去っていった。
「おばさん・・・。武が・・・?」
おばさんは泣き崩れた。 大声で泣き叫んだ。
開けてみるとそこには、「谷山武」と記されていた。
「帰ってくるって 言ったのに」
絶望の2文字が刻印されたその紙切れを
あたしは握りしめて いつまでも泣き続けた。
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