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せんそう 作者:比呂

第2回  
徐々に遠くなっていく意識。


その向こう側で、いつか聞いたことのある声が聞こえた。













「武!何ぼーっとしてるんよ!」
「ああ、今日防災訓練やったか?」
「そうよ。こんなとこに座ってないではよう行きんさい!」
「お前は、毎日毎日おかんみたいにうるせぇのぉ!」
「あんたがノロノロしてっからでしょうが!ほら、遅刻するよ!」


イトコの美夏は、いっついっつも俺に世話を焼く。
中学3年生になりたての僕らは毎朝一緒に登校する。






時は、昭和18年、第二次世界大戦まっただ中の沖縄。








「タケ、今日おにぎりかいなー!」
「おかんが寝坊してん、腹減るわ〜。。」
「美夏に作ってもらえばええやないか。」
「あーあいつにだけは俺から頼んだりしとうない。」
「なんで?」
「なんか・・・悔しいから。」
「でも、お前らイトコっちゅーよりコイビトみたいやねんな!」
「コ、コイビト?!」
「うん、恋人。」
「やめろや!きしょい!」
「でも、美夏はお前のこと好きなんやろなぁ。」
「ちゃうって!あいつは1組の橋本が好きなんよ。」
「はぁ?お前バカだろ。橋本が美夏のこと好きで、最近告白してふられたんよ。」
「そーだったんやー・・・。」


何故かホッとする俺。



「イトコは結婚できんのかいな?」
「出来ないに決まってるやないか!」
「できるよ。」

美夏が後ろで言った。

「できるよ。」


「でっ、出来てもしないよなぁ!美夏!」

美夏は少し眉毛を下げて笑って、そうやね、と呟いてどこかに消えた。


「タケ、お前どないすんねや。」
「・・・・どーするもこーするもないやん。」
「でも、美夏は・・・」
「しょーうがないやんけ。イトコだぞ。どーしようもない。」



すっきりしない気持ちを残して
俺達に召集令状が届いた。



「う・・・うそだろ?」
「武まさか・・。」
「フィリピン・・・・・」


嘘だろ?
いきたくねぇよ、俺・・・。
こんなままで、死にたくねぇよ!!




「よかったな。誇りに思いや。」

そう言って、美夏が笑った。

「天皇様のお役に立てるんや、ありがたくおもわんと。。」



悲しかった。

そんな風に言う美夏が、悲しくて仕方なかった。





その日俺はふとんにもぐり、考えた。


考えたくないのに、考えることしかできなかった。





美夏・・・・・


















目を閉じると、俺は見覚えのある家の中にいた。


そして俺の名前を呼ぶ。





「きょう!なつ!」



きょう?それは・・・・・・・誰だ?






目を開けてみると、たくさんの人に囲まれて俺は寝ていた。


どんどんと記憶が戻ってくる。







「とうちゃん・・・。」

「お前!何海で倒れてんだ!夏乃も!」

「あ、あたし、寝てた?」

「ふたりして、砂浜に倒れているのをばあちゃんが見つけたんだよ!」

「違う、違うの。あたし、夢を見たの。
 中学3年生の、女の子で、あたしは‘みか’って呼ばれてた。」



え?




俺と、同じ夢?







「俺は、‘たけし’って・・・。」





「え・・・?」










どうなってるんだ。





俺と夏乃は、二人で昭和18年の世界にタイムスリップしていた。


















 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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