夢を見た
俺の耳元で何かを囁く
顔の見えない誰かの夢
思い出せないけど
「生きろ」と
そう言ったことだけははっきりと覚えている
「夏ーお前用意できたん?」 「完璧♪」 「沖縄とか懐かしいなぁ。ばぁちゃん元気にしとるかな。」 「元気元気!はよ来いゆうてうずうずしとった!」 「そかぁ。よかった。」 「おーい出るぞー。」 「行くべ。」 「うん。」
俺と夏乃は近所に住むイトコ同士で 俺の父さんと、夏乃の母さんが双子なんだ。 だから俺達はよく兄妹みたいに間違われる。
そんな2家族で、5年前沖縄に引っ越したおばあちゃんの家に行くことになった。 引っ越したと言うより、戻ったの方が正解かも知れない。 ばあちゃんは子どもの頃、沖縄に住んでいたらしく 戦争が終わってから、本土の方に移ったそうだ。
よくばあちゃんが言っていた。
「戦争は、大事な物を失くす。 あんた達は絶対あたしらみたいになっちゃいかんよ。」
ばあちゃんの言う、「あたしら」がじいちゃんとの事ではないことを俺は知っていたけど。
飛行機で1時間半。 沖縄の熱い風が、俺の頬をかすめた。
「暑・・・。」 「異常気象・・・。」 「ばぁか、こんぐらい普通だ。」 「でも前がボ、ボヤっと・・・汗」 「蜃気楼やないか。ぼけっとすんな。はよ行くぞ。」 「タクシーはぁ?」 「高けぇんじゃ!」
父さん達が前を歩いて 俺達は、重たい荷物を抱えて後ろを歩いていた。
「やべーこれじゃ熱射病になる・・・。」 「やんな。はよ着かんと。」
空港から歩いて ばあちゃんちは1時間ぐらいの所にあった。
家に着いた一行は、疲れ果てて泣きそうになっていた。
「よう来たねぇ!麦茶でもいれるかぁ?」 「頼んだ!!」 「あたしも!」
冷たい麦茶を飲んで、俺はつい寝てしまった。
気づいたら俺は違う居間に寝ころんでいて となりには夏も眠っていた。
時計は6時20分をさしていた。
隣の隣の部屋から酔っぱらった父さん達の声が聞こえる。
「夏!起きろや!」 「んー?あーもうこんな時間かいな。」 「寝過ぎたなぁ。なんかサッパリせん。」 「あたしも。ちょっと外出るか?」 「せやな。」
ばあちゃんちを出て、右手に狭い坂があって そこを降りるとあたりは一面海だった。
「うわーすげぇ!」 「キレイやなぁ!」 俺は水平線を見つめて、それから目を閉じた。
水面が波打った。
するととなりから夏乃じゃない声が聞こえた。
「武!学校遅れるよ!」
「は?」
「は?じゃない!」
目を開けると、前は変わらず綺麗な海で
隣には、もんぺのような着物を着た女の子が立っていた。
どんどんと現実の記憶がなくなっていくのを感じた。
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