その日の夕方、一人部屋にこもり皆が言ったことを考えていた。 でも、馬鹿な頭でいくら考えたって答えなんか出ないから…弟の助けを借りた。 なんてたってコイツはクラスでトップを争う男。 高校はサッカーの推薦だけど、サッカーなくたって上の上くらいの学校は行けるだろう。 ケツを争うあたしとは雲泥の差だ。
「ねぇ、ちょっと聞いてよ。」 「なに?」 「アレアレ、コレコレ、むにゃむにゃなんだけどこれってどーゆー事だと思う?」 「俺、そういう恋ごときで頭使うのやだから。」 「そういうこと言わないでさぁ!可愛いねぇちゃんのためじゃん!」 「可愛いとはとうてい言えねぇツラだけどな。」 「あんだと?このガキ。」 「ガキはどっちだ。うすらボケ。」
ギャアギャア
「って!こんな事してる場合じゃないんだった。」 「佑太って人は絵里子さんのこと好きじゃないと思うけどね。」 「それは・・・・多分ない。」 「なんで?」 「佑太は・・絵里子のこと好きだと思う。」 「言い切れるんだ。」 「う、うん。」 「じゃあいいじゃんそれで。なんか問題あんの?」 「ないけど・・・。」 「あんま深く考えちゃダメってことだ。気楽にいけよ。」 「サンキュ。」 「おう」
湊に聞いて分かったことがひとつある。
あれは佑太と絵里子の2人の問題で あたしが何か言う事じゃない。
次の日、絵里子が言った。
「返事くれたよ。」 「ふーん。何だって?」 「いいって。」 「・・・・・言ったとおりじゃん!良かったね。」 「汀はいいの?」 「へ?」 「ハルに言わなくていいの?」 「だーかーらー!好きじゃないって言ったでしょ?!もう余計なこと考えなくていいんだよ。」 「そうだね。だって 汀が言ったら終わりだもん。」
「え?何?何て言った?」 「んーん!次教室移動だよ!」 「物理じゃーん泣」
次の物理の時間も、世界史の時間も、あたしの心は雨だった。
昼休みになってあたしは久しぶりに屋上に行った。 空は晴れていて、スッキリとしていた。
隅っこの方に誰かがいた。
髪の毛が短くて大の字で寝てる。
佑太だ。
あたしはそっと近寄って脅かしてみせた。
「おい!」 「うわ!ビビった!」
隣に寝る。
「おめでとう。」 「何のこと?」 「絵里子だよ!あたし嬉しいな。」
「お前が言ったんだからな。」 「は?」 「お前が早く返事しろって言ったんだからな。」 「うん、言ったね。」 「後から文句言うなよな。」 「言わないよ。嬉しいって思うから。」 「・・・・・お前も早く好きな人つくれよな!」 「そうだね!あたしも佑太と付き合いたかったな!なんちって笑」 「・・・・・・・・」
あたしの言葉を境に、佑太は黙ってしまった。
そして空をゆっくりと見上げた。
表情は見えなかったけれど。
あたしは少し息を吐いて立ち上がった。
「ウソだよ。じゃーね!」
16歳
好きな人には好きな人がいて
切なく思う秋の始まり。
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